Vol.121「痔」

Q.痔の痛みに悩んでいます。出産をきっかけにイボ痔と脱肛になり、痛みが起こるたびに市販の塗り薬をつけて何とか抑えていました。しかし最近では特に体が冷えた時や疲労感が強い時など激しい痛みに襲われ、また長時間同じ姿勢で座っていることが難しくなり、仕事もほとんど集中できません。このままひどくなるばかりかと心配でたまりません。何か良い漢方薬はありますか? (46歳女性)

A.女性の産後の痔はよく聞きますね。いわゆる痔は内痔核、外痔核、痔ろう、脱肛などの総称です。痔疾はいずれの場合も肛門周辺の静脈のうっ血で?血(おけつ)(古血の滞り)が原因です。日本人が3人寄れば1人が痔主とよく比喩されますが畳の上での生活、日本式便所での長居、食生活などと関係しているのでしょう。発生原因で特別多いのは慢性の便秘、出産後、長時間の立ち仕事、香辛料などの刺激物のとり過ぎ等と言われています。
 また痔の痛みは痔病みの人にしか分からないと言われるほど激しいもので、人に言えず悶々と病に苦しんでいる人は多いようです。痛みが激しい時はぬるま湯を脱脂綿に湿らせ軽く押すようにして拭くとよいようです。食べ物ではトウガラシ、ショウガ、カレーなどの香辛料とアルコールは避けてください。ますます痛みがひどくなります。
 さて御相談の女性は特に冷えた時や疲労感が強い時などに脱肛と共に激しい痛み(外痔核)があります。出血はほとんど無いので内痔核はありません。お勧めする漢方薬は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がいいでしょう。特に痛みが強い時には炎症、腫れを治す石膏製剤と併せて服用すると速効性があります。例えば桂枝茯苓丸合麻杏甘石湯(けいしぶくりょうがんごうまきょうかんせきとう)として用います。
 また普段から便秘がちな人には乙字湯がいいでしょう。このお薬は痔に最もよく使われ、脱肛、イボ痔、切れ痔など広範囲に効き出血や痛みを抑え、また便通も整えてくれます。御相談者のように疲れると脱肛し痛む痔には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)がよく、日頃から体力がなく慢性的な疲労感がある人の虚弱体質を改善して脱肛を治す作用があります。外用薬としては裂肛で痛みのある時は紫雲膏(しうんこう)を就寝前に患部に塗ります。
 最後に痔の痛みを早く治すコツは、強く痛む時は患部をうんと冷やし、痛みが和らいでくるとよく温めることですね。

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