Vol.122「夜尿症」

Q.9歳の息子ですが、ほぼ毎日のおねしょに困っています。
 よく喉が渇いたと言って水分もたくさん取り、日中も頻繁にトイレに行きます。小さい頃から心配性の性格で怖い夢をみて泣いていた日や、また一日中遊び回ってすごく体がくたびれた日の夜は特におしっこの量が多く、オムツの容量を超えることもあるぐらいです。泌尿器科でトフラニールを飲みましたが体に合わないようです。
 何か良い漢方薬があれば教えてください。

A.子どものことで漢方相談が多いのは虚弱体質や感染症にかかりやすい、食欲不振、アレルギーなどですが、今回は夜尿症のご相談ですね。普通は4~5歳ぐらいで排尿調節ができるようになりますが、今回のように小学生になっても寝小便が治らない状態を夜尿症と呼んでいます。この夜尿症は「睡眠の深さ」と膀胱の「尿保持力の程度」の組み合わせで起こってきます。一般に夜尿症の子どもは「眠りが深い」「日中尿が近い(尿保持力が低い)」の両方、または一方に当てはまります。
 ご相談の子どもさんにまずお薦めするのは小建中湯(しょうけんちゅうとう)です。この漢方薬は虚弱児の体質改善薬として有名で、主として夜尿症、頻尿症、小児腹痛、小児性常習性頭痛などにもよく用いられます。神経的、肉体的疲労で夜におしっこに気づき起きられない夜尿症によく効きます。他には六味地黄丸(ろくみじおうがん)もいいでしょう。中国の明の時代の「保嬰(ほえい)全書」という子どもの病気ばかりを取り上げた有名な医学専門書の中で、120項目にもわたって適応例が述べられています。たいていの子どもの病気に使われているということでしょう。特に小児や乳幼児の発育不足、知能発達不良などによく用いられてきました。この漢方薬は膀胱の「尿の保持力」を高めてくれます。もしちび漏れが続くような夜尿なら、膀胱括約筋を引き締める補中益気湯(ほちゅうえっきとう)がよく効きます。この漢方薬は、元気なく、疲れやすい、血圧が低い、夏バテするなどの虚弱体質の人の弱った体を引き締めながら、夜間尿を治していきます。もちろんご老人の夜間尿にもよく効きます。
 さて夜尿症は治るのに少し時間がかかります。早い人で数カ月、中には1年以上かかる事もあります。焦らずにしっかりと取り組んでください。

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