Vol.113「慢性胃腸病」

Q 若い頃から慢性胃炎と言われてきました。2カ月ほど前に十二指腸潰瘍穿孔(せんこう)で手術をし、手術はうまくいったのですが、その後も一日に何度もどことなくお腹や背中がキューっと差し込むように痛みます。検査では異常なく原因も分からないし、今よりさらに痛みが強くなっていくのではないかと不安でたまりません。こんな症状に効く漢方薬はありますでしょうか?(70代女性)

A. 胃炎は誰でも多かれ少なかれ経験したことがあるでしょう。お酒の飲み過ぎ、ヘビースモーク、刺激物や冷たい物の取り過ぎ、あるいはストレスや食物アレルギーからもよく起こります。最近はストレス性胃腸炎が多くみられるようになりました。ストレスに胃が耐えきれなくなって胃潰瘍まで発症してしまいます。この慢性胃炎の10人に1りかん人は胃、十二指腸潰瘍を罹患しているといわれています。胃潰瘍はだいたい食後1~4時間、十二指腸潰瘍は空腹時や夜中の1時ごろに痛んだりします。
 痛みの度合いと潰瘍の大小はあまり関係ないようです。西洋医学では潰瘍を食い止めるために胃酸の分泌を抑制するH2レセプター拮抗剤を用います。とてもよく効きますが、長期連用すると胃腸壁が薄くなって、再度強い潰瘍を併発した時は早く穴が開いてしまいます。ですから一時的に抑えとして使用するべきです。
 この女性は慢性胃炎で十二指腸潰瘍穿孔の手術をし、うまくいったのに後に一日に何度もお腹や背中が差し込むように痛み、検査では異常がないということですね。おそらく心因性の胃腸けいれんでしょう。心身症の方に起こる胃痛、背痛によく似ています。
 さて今回は柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)がよく合います。神経性胃炎や胃・十二指腸潰瘍の代表的な漢方薬です。他には胃痛や急性大腸炎、潰瘍性大腸炎などで特に心下部(みぞおち)や腹筋・背筋の緊張疼痛する症状によく効きます。他には安中散もいいでしょう。慢性・急性の胃痛甚だしく、胃酸過多症でストレスに弱い人に用います。また冷え症で血色が悪く、気力・体力の衰えている人には人参湯が効きます。慢性的な胃腸虚弱体質を治すには六君子湯を続けてみてください。
 胃腸が丈夫で何でもおいしく食べられるというのは健康のバロメーターですね。

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