Vol.114「自律神経失調症」

Q. 半年ほど前からうまく睡眠がとれなくなり、その頃から首と肩のコリつけがひどくつらいです。特に右耳の付け根の辺りがカチカチで、仕事でのパソコン業務など下を向いて作業を続けるととても気分が悪くなります。電話での相手の話し声が急に大きく聞こえたり、子どもや女性の甲高い声が耳に響いたりすることもあります。耳鼻科での検査では異常なしと言われましたが、いつまでこんな状態が続くのかと不安で仕方ありません。こんな症状に効く漢方薬はありますか。(40歳女性)

A. 「自律神経失調症」は心の病気です。
 心の病気には統合失調症、うつ病、不安神経症、心身症など多くの種類がありますが、ストレスが主な原因です。女性の更年期障害と似ていますが、ホルモンの分泌とは関係なく全身の臓器を自動的に調節している自律神経そのものの異常で発生します。さまざまな症状がありますが、主な訴えは全身がだるい、動悸、めまい、肩凝り、頭痛などで、消化器系では胃痛、過敏性腸炎、神経性食欲不振、過食症など、また皮膚系では痒みが激しい過敏性皮膚炎、蕁麻疹、多汗症、円形脱毛症なども多くみられます。最近ではストレス性腰痛、筋肉痛もよく耳にします。
 さて、ご相談の女性は睡眠障害と強い首筋から肩のコリつけ、耳の不調から、漢方では肝陽上亢(かんようじょうこう)(自律神経の興奮)と考えます。この方には肝気が高ぶって神経過敏となり、怒りやすくイライラして性急となり興奮して眠れないような時に使う抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)がよく効きます。また頸筋のコリつけや耳の異常を伴う神経症の代表薬の柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)もいいでしょう。またくたびれると余計に神経過敏になり、不安感や不眠、動悸などがある人には安神剤の桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)を用います。他には、喉の違和感を伴うような神経症には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、カーっと熱くなったり汗をかいたり不眠症でイライラして怒りっぽくなるような女性には、有名な加味逍遥散(かみしょうようさん)がよく効きます。
 さて、神経症に悩まれる方々には体を温める週2~3回の温泉療法と軽めの運動をお勧めします。温めてホッとして楽になると体がほぐれてきます。また体がほぐれると気分が良くなり、前向きな考え方ができるようになるでしょう。自律神経失調症は体から心への信号ですね。

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