Vol.10「痔・脱肛」

いわゆる痔は内痔核、外痔核、痔ろう、脱肛などの総称です。痔疾はいずれの場合も肛門周辺の静脈のうっ血と考え、淤血(古い血の滞り)が原因とみなされます。日本人が3人寄れば1人が痔主とよくひゆされますが、畳の上での生活、日本式便所での長居、食生活などと関係しているのでしょう。

だいたい成人の50%に見られる大変多い病気です。痔の痛みは痔やみの人にしか分からないと言われるほど激しいもので人に言えず、悶々と病に苦しんでいる人は多いようです。痔もちの人はまず便秘に気をつけること。肉食の時は必ず野菜を多く食べましょう。運動不足にも注意すること。痛みが激しい時はぬるま湯を脱脂綿にしめらせ、軽く押すようにして拭くとよいようです。食べ物ではショウガ、トウガラシ、カレーなどの香辛料とアルコールは絶対に避けて下さい。ますます痛みがひどくなります。

さて、痔の発生原因として特別多いのは、慢性の便秘、アルコール、たばこ、香辛料など刺激物のとりすぎ、長時間の立ち仕事、なま物や冷たい物のとりすぎ、ストレスなどと言われています。つらい痔には漢方薬がとてもよく効きます。

それではよく用いられる代表的な漢方薬をご紹介します。

乙字湯(おつじとう)…痔に最もよく用いられ脱肛、いぼ痔、きれ痔など広範囲に効き、出血をおさえ、痛みを止めます。また便通を整えてくれます。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…日頃から体力がなく慢性的な疲労感がある人の虚弱体質を改善して脱肛を治す作用があります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…産後の痔疾や子宮、卵巣に障害のある人、あざができ易いなどの古血が多くみられる時に用います。一般的にほとんどすべての痔に併用されます。

弓帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)…出血がとまらない痔。もともと虚弱で体力のない人に用います。

小建中湯(しょうけんちゅうとう)…疲れやすく胃腸が弱いため便秘、下痢を繰り返す人に使いますが長期に続けると体力が増し脱肛も起こらなくなります。

紫雲膏(外用薬)…裂肛で痛みのある時、就寝前に患部に塗ります。

この他にも民間薬としてカボチャやイチジクの煎液なども知られています。痔ろうの人はドクダミ茶を長期に飲むとよいでしょう。最後に痔の痛みを早く治すコツは、強く痛む時は患部をうんと冷やし、痛みが和らいでくるとよく温めることです。

さて、痔についていろいろと述べてきましたが、痔に限らずどんな病気にも言えることは、心と体を休めることですね。

次回は風邪についてお話します。

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