Vol.9「痛み・頭痛」

痛みはだれもが経験するつらい思いですが、これは私たちに体内での異常を教えてくれる最初の警告と言えます。痛みで最も多いのが頭痛、腰痛、四肢関節痛ですが、今回は頭痛を取り上げます。

漢方の世界に「不通則痛」(通ぜざればすなわち痛む)という教えがあります。気血(生命エネルギー)の流れが阻害されるために痛みが起こるのだよという意味です。頭部の気血の流れが悪くなって頭痛が発生します。

治療法として西洋医学で用いられる鎮痛剤はとてもすぐれていて高い効果が得られますが、痛みそのものを止めることを目的としているため、原因を治すことはできません。

そこで、しつこく繰り返す慢性頭痛には、原因治療の漢方薬をお勧めします。漢方薬では頭痛を単なる一つの症状とみないで体全体を診ながらお薬を処方します。大きく分けて外感頭痛(湿気、寒さ、暑さ、風邪など)と内傷頭痛(ストレスや生活習慣病、体質などの内的疾患)が考えられます。が、いずれにしても体内の気血の流れを改善することを目的とします。

それでは各漢方薬がどんな症状に効果があるのかをいくつかご紹介します。

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)…発作的に生じる頭痛で(偏頭痛あるいは頭頂部の痛み)悪心、嘔吐があり、首すじからこめかみの凝りが強い。疲れた時に発症しやすい。

釣藤散(ちょうとうさん)…ふらつき、めまい、耳鳴り、ほてりなどがみられ、目の充血、目の奥が痛み、いらいら、肩こりなどの自立神経失調症や高血圧に伴う頭痛。特に朝に起こる。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…元気がない、疲れやすくて四肢がだるい。立ちくらみや動作がおっくう、食後眠くなる。汗をかきやすいなどの慢性疲労を訴える人の頭痛。

抑肝散(よくかんさん)…いらいら、怒りっぽい、不眠、筋肉のけいれんなどの自律神経が高ぶる人の頭痛。

川弓茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)…突発性の頭痛で、頭皮や脳血管の収縮による痛みに効きます。風邪の時によく用いますが偏頭痛や神経性頭痛などにも効果がある。

この他にも五苓散(ごれいさん)、桂皮人参湯(けいしにんじんとう)、七物降下湯(しちもつこうかとう)など、たくさんの効果的な漢方薬があります。

さて頭痛についていろいろと述べてきましたが、頭痛は体全体の好調や不調のバロメーターとなるもので病気に対する赤信号でもあります。合成新薬の鎮痛剤を習慣的に使用するのはさけたいものです。そして体からの声を聞いてみましょう。

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