Vol.59「シェーングレン症候群」

最近ドライアイなどで困っている人が多くなっているとテレビなどで言われていますが、これに関連して、今回はシェーングレン症候群のお話をします。

80年ほど前のスウェーデンの眼医者さん、シェーングレンが発表した病気で、涙腺や唾液腺に慢性的な炎症を起こし、目と口が乾燥する病気です。

慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどと合併して表れるので、膠原(こうげん)病の一つと見なされ、閉経期以後、40~50歳代の女性に多く発病します。

まず口と目が渇く症状が表れ、唾液が出ないため食物を飲み込むことができず、いくら水を飲んでも口の渇きが取れなくなります。

また目も涙が出にくくなって充血し、痛みやかゆみで悩まされます。乾燥性角結膜炎が起こるためで、症状が進行すると失明する恐れもあります。

中年以後の女性に多発することから、ホルモンと何らかの関係があるとも言われていますが、原因は今のところ分かっていません。

このシェーングレン病と併発する病気に、全身の皮膚が硬くなって、こわばり痛む強皮症、全身の皮膚と筋肉が侵される皮膚筋炎、あちこちの関節が痛み、硬化する多発性関節炎などがありますが、いずれも膠原病です。

治療は現代医学では完治させることができず、保存療法になりますが、主に消炎剤やステロイド剤などで、重症例では免疫抑制剤を服用します。シェーングレン病では人工涙液の点眼や人工唾液を用いたりすることもあります。

さて、このシェーングレン病のような腺細胞の変性や萎縮などの増殖性炎症疾患を、漢方では淤血症体質と見ます。ですから体の気、血、水、をよく巡らせ、神経を緩め(疎肝)、腺分泌を促す滋陰剤を駆淤血剤と併用して治療に当たります。それでは代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

弓帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)…冷え性で貧血気味の虚弱体質の人に。本方は産後の補養のためにつくられた処方で、温めながら古血を去り全身の血行を良くします。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…疲れやすく、めまい、頭重、肩凝り、生理不順などの血の道症の人に。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…ゆううつ感、いらいら、怒りっぽい、などの神経症状とともに、生理痛、生理血が少ない、無月経などの更年期症候群の女性に。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…冷えのぼせ、肩凝り、頭重やめまい、しみ、湿疹などの?血体質改善に。

シェーングレン病をはじめとする膠原病は微小血流が悪化して、膠原病繊維膜(組織結合膜)の変性や萎縮などから炎症が慢性化します。どうも神経的な誘因が大きいと感じています。

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