Vol.60「精力減退」

不妊症と言えば女性のことを考えがちですが、最近は男性不妊が非常に多くなっています。

病気や虚弱体質、加齢からくる体力低下以外に、まだ若いのにスタミナ不足、精力減退を訴える人が多く、ほとんどが疲労、ストレス、コンプレックス、恐怖心などの精神的な理由が主因です。結果、精子数や運動率が低下し、男性不妊となっています。

ちなみに精力には個人差があり、70歳を超えて元気な人もあれば、40歳の声を聞く頃からめっきり衰える人もいますが、一般的には50歳後半から少しずつ精力が減退していくのが自然なところです。

西洋医学もED対策は進んできていますが、漢方医学では得意分野の一つで昔から人々は涙ぐましい努力を続けてきました。

南アフリカのカメルーンやナイジェリア、コンゴ付近に自生するヨヒンベの樹皮から作られるヨヒンビンは男性催淫薬として世界的に有名で、日本でも製品化されています。南アメリカでは高山野菜のマカが用いられ日本人にも最近はなじみになっていますね。中国ではイカリソウがあります。四川省の北部に淫羊(いんよう)というヤギがいて、霍(かく)という植物を食べて一日に100回も交尾するというので、この植物を淫羊?と呼ぶようになったそうです。

日本でもイカリソウは自生していて精力剤として用いられています。動物生薬として代表的な強壮薬が鹿の角です。この鹿茸を主薬とする漢方処方に鹿茸大補湯がありますが、中国の明の時代に作られ、韓国を経てわが国に伝わりました。

強壮以外にも体力や視力の衰え、冷え性、ひざや関節の痛みなど、さまざまな人に服用されています。

さて漢方医学では、精力減退を腎虚と考え、全身症状の一部ととらえます。漢方でいう「腎」とは、腎臓以外にも副腎皮質と関係のある脳下垂体、性腺、甲状腺、膵(すい)臓などのホルモン器官と関連を持つものとしています。ですから精力が減退して性機能が落ちることだけではなく、心身の不調や老化までをも考えて補腎剤を用いて改善していきます。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

八味地黄丸(はちみじおうがん)…中高年以上で体力が衰え下半身に力が入らないような人に。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)…元気がなく不安感や不眠、多夢、夢精などの神経障害のある人に。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…普段から元気がなく、慢性的な疲労感がいつも残っているような人に。

鹿茸大補湯(ろくじょうだいほとう)…体が冷えやすく、虚弱体質気味で貧血、食欲不振、神経痛、関節の痛みなどを訴える人に。

古今東西を問わず男性は精力絶倫にあこがれますね。

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