Vol.125「心の病気」

Q.体の重だるさと、精神的に意欲が出ない事に悩んでいます。
始まりは中学2年生の時で、週に一度くらいは体調がすぐれない日があり、学校の保健室で横になったり、どうしても回復しない時は早退や欠席をしたりすることもありました。食欲もなく体が痩せています。大学に上がる頃にはより一層ひどくなり、何に対しても意欲が湧かず勉強にも集中できないため試験を受けることさえできなくて留年してしまいました。
 病院で処方された抗うつ薬を1年ほど続けていますがあまり効果を感じられません。一度漢方薬を試してみたいのですが…。(20歳男性)

A.心の病気は統合失調症、うつ病、神経病、心身症とに大別されていますが、今回は「うつ病」ですね。気が滅入って悲観的になり、何もしたくなくなってしまう病気です。思春期と初老期に多く、抑うつ気分、悲哀、寂寥感(せきりょうかん)、不眠、自殺願望等が表れます。最近は幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの再吸収阻害薬(さいきゅうしゅうそがいやく)(SSRI)が効果を上げているようです。現代では皮膚病は皮膚科、お腹は胃腸科、風邪は内科という治療になりますが案外心の病気からの疾病も多いものです。
 漢方薬では古くから「心と体は不可分」という考え方から、心の病気にはたくさんの処方が用意されていますが、今回のご相談の「うつ病」には桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)がいいでしょう。不安感、不眠、神経症や元気がない、食が細い、顔色が悪いなどの症状によく効きます。また、神経衰弱やノイローゼ、不眠症、血の道症によく用いられる柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)を併用するとなお効果的です。「うつ病」で、気分がふさがり胃腸の働きが弱ってしまったり、のどがつまったりする感じが強ければ半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が有効です。
 他には、イライラ感が強く、のぼせ、不眠などの不安神経症、強迫神経症には柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、理由もなく悲しんだり怒ったりし、不眠や胃のもたれなどをよく訴える人には甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)などがそれぞれよく用いられる漢方薬です。今回はぜひ、柴胡桂枝乾姜湯合桂枝加竜骨牡蛎湯を服用してみてください。数カ月しないうちに良い結果が得られるはずです。
 昔から「うつ病」は、病気や孤独な生活などから年齢が上がるほど増える心の病気とされてきましたが、最近は若い人にも多く発病するようになってきました。

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