今回は冬に特によく発症する顔面神経麻痺についてのお話です。
急に片側の顔面筋肉の麻痺が起こるベル麻痺という病気があります。疲労が重なったときや、風や冷房などで顔が冷やされた時によく発症します。他には耳にできた帯状疱疹(たいじょうほうしん)や外傷からのウイルス性の顔面麻痺もあります。
症状としては、普通片側だけに麻痺が起こり、表情がゆるんでしまうので顔全体がゆがみ、額にはしわがよらなくなってしまいます。
口の片方が下がって閉じられなくなるので、食べ物やよだれなど口の中のものが出てしまいます。
また、まぶたも完全に閉じることができず白目が見える状態になり、そのため角膜が傷つきやすくなるので注意しなければなりません。この冷えて起こるベル麻痺は発病してから2~3日に一番ひどい症状が現れ、その後数週間で自然に治ってしまうか、後遺症が残るかだいたいの見通しがつきます。
現代医学では、急性期の治療にステロイド剤やビタミン剤の内服、神経ブロック注などを用い、回復期にはマッサージや電気治療を施します。マッサージは朝夕、30分~1時間、目の周りやおでこの筋肉を手で円を描くように回します。
また、麻痺している口角を引っ張り上げるようにするのも効果的です。大事なことは、絶対に後遺症を残さないようにすることです。
さて、漢方では昔から顔面麻痺の治療薬がたくさんあります。この寒性のベル麻痺や熱性のウイルス性麻痺は発症後、3カ月以内であればかなりの効果が期待できます。寒邪や熱邪に負けないように体の免疫力を高め、特に顔面の血行を促進して、むくみやしびれを改善していきます。顔面神経麻痺を発症した時には、病院治療と併用して漢方をぜひ服用してみてください。必ず効果が得られます。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)…体力虚弱で手足が冷えやすく、特に老人や小児の免疫力の弱い人の体力回復に。顔面麻痺に用いる代表的なお薬です。
麻黄湯(まおうとう)…体表面を温めて発汗し、表皮の血行を強化して神経麻痺を改善します。
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)…身体上部、特に顔面の熱性の炎症に用います。ヘルペスなどからのウイルス性顔面神経麻痺に。
桂枝茯苓丸合川弓茶調散(けいしぶくりょうがんごうせんきゅうちゃちょうさん)…回復の遅い人や、麻痺の固定した人の微小循環を改善し、神経障害の回復を図ります。
体が冷えることは万病のもとです。どんな病も体を温めることが大切ですね。