Vol.138「パニック障害」

Q.突然襲ってくるパニック症状に悩んでいます。
 特に車を運転している時、赤信号になり停車したり大きな交差点にさしかかったりすると、息苦しさや動悸、また手が震えたり足がしびれるなどの発作が起こり、発作時用の抗不安薬を飲まずにはいられなくなります。他にも橋の上やエレベーターの中、電車に乗っている時など逃げ場のない場所は起こりやすいので、できるだけ避けて生活しています。日常的にも強い不安感に襲われることがたびたびあり、10年ほど前から毎日精神安定剤を服用しています。
 つらい発作や不安感が少しでも和らぐような漢方薬はありますでしょうか?(50代女性)

A.心の病気は統合失調症、うつ病、不安神経症、心身症などが知られています。ご相談の「パニック障害」はこの不安神経症の一部に含まれていたのですが、そのまとまった病像の特徴から独立した病気として約35年前につけられた病名です。何の前触れもなく特別な理由もないのに、電車内や車の運転中などでも急に発作が出ます。
 病状は動悸、息苦しさ、胸の痛み、吐き気、体のしびれ、異常発汗、ふるえ、自分が自分でない感じ(離人症状)、気が狂ってしまうのではないか、このまま死んでしまうのではないかという恐れなどが心と体にさまざまに現れます。ほとんどが10分ほどで激しい症状は治まるようですが、強い不安感が残ります。
 この「パニック障害」が長引くとほとんどの人が楽しくない、寂しい、死んでしまいたい等のうつ症状を併発していきます。このような時、漢方では柴胡(さいこ)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)、茯苓(ぶくりょう)などの生薬を配合し、精神的なストレスからくるイライラ、緊張、不安、ゆううつ等を治していきます。代表的なお薬は四逆散(しぎゃくさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)、加味逍遥散(かみしょうようさん)類です。また気分が落ち着かず寝られない時には甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などがあります。さらに病が長引いて「うつ病」が強い時には気分を発散させるシソの葉を原料とした半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や香蘇散(こうそさん)が有効です。
 今回のご相談者は訴える症状が典型的な「パニック障害」ですね。柴胡加竜骨牡蛎湯合桂枝加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとうごうけいしかりゅうこつぼれいとう)がいいでしょう。よい結果が得られるはずです。3~4カ月は服用を続けてみてください。
 さて、このパニック障害は外からは分かりにくい心の病気ですから、よく理解して優しく接してあげてくださいね。

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