Vol.123「汗疱(かんぽう)」

Q.手の平、足の裏に出る水疱湿疹に悩んでいます。
 何年も前から繰り返しているのですが最近特に手の平がひどく、水に浸しただけでも耐えられない程の痒みが起こるためお風呂に入る時でさえ手袋をしています。湿疹がつぶれてジュクジュクがひどい時は「ニオイがするよ」と家族に言われることもあり、とてもつらいです。
 最近では手首や腕にもしつこい痒みが広がって精神的にもイライラして落ち着かず、いつまでこんな状態が続くのか不安でたまりません。相談に乗っていただけないでしょうか?(39歳女性)

A.汗疱は手の平や足の裏などに粟粒大の水疱が生じる病気で、とても痒みが強いことが特徴の一つです。手足にできるあせもの様なもので、水疱は皮膚の深いところに発生するのでステロイドのような軟膏薬では治すことはできません。別の名では掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)と呼ばれることもあります。ひどくなると手や足の裏が腫れ、皮膚が剥がれ落ちてしまう難治性の慢性炎症性疾患です。
 原因はよく分かっていません。どうして手や足の裏だけに発症するのかさえ不明です。体は全く健康なのに長年この「汗疱」で悩んでご相談にお見えになる方が多くいらっしゃいます。このようなウイルスや細菌によって起こる、皮膚病ではなく原因の特定が難しい疾患には、漢方薬が著しい効果を発揮することがよくあります。
 今回のご相談者は、女性39歳で貧血気味で疲れやすく冷え症でむくみもあります。漢方では体質的に「気虚」「血虚」「水毒」、また手の平がジュクジュクして強い痒みは「風湿熱」ととらえます。ぜひ消風散(しょうふうさん)を使ってみてください。また長年繰り返している慢性の皮膚病には温清飲(うんせいいん)という漢方薬を併せて服用します。ですので温清飲合消風散が最も効くでしょう。3~5カ月も続ければかなり改善されるはずです。水疱が破けて皮膚があまりにもジュクジュクしてじん出液の多い時には、一時的に越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)や五苓散(ごれいさん)を用いて水毒を治めます。
 体質を改善してゆくには先ほどの「気虚」「血虚」「水毒」を考えて、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)がよく用いられます。またアレルギー体質で洗剤にもかぶれやすい人には小柴胡湯(しょうさいことう)がいいでしょう。
 単なる手湿疹と侮るなかれ。痒みで夜も寝れない程のつらさから、心が参ってしまう人もいるほどです。その人の靴を履いて歩いてみなければ、その人のことは分からないとはよく言ったものです。

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