Vol.111「熱中症・夏バテ」

Q.60歳 女性。2週間ほど前に軽い熱中症にかかり、体重が2㎏ほど減ってしまいました。その後から体中に脱力感が続いています。目が覚めるとだるいし、食欲もなく夜も気持ちよくぐっすり眠れません。肩こりはもともとありますが、ここ2週間は特に凝りつけが強くて痛みます。この疲労感によく効く漢方薬を教えてもらえませんか?

A. この御相談者は小柄で細身、若い頃から胃腸が弱く、体力もないとのことです。
最近、夏になると日本各地で「38℃~40℃を超えました」というニュースが流れるようになりました。地球温暖化といわれて久しくなります。こんなニュースを聞くたびにそれだけで「熱中症」の気分になってしまいます。ちなみにお風呂の最適温度は37~41℃ぐらいですが、夏日の35℃超えは外で毎日お風呂に浸かっているのと同じですね。
 さて、暑い夏は体力を消耗し、夜も十分な睡眠がとれません。また冷たいものの取り過ぎで胃腸が弱り食欲不振になったりします。クーラーによる外気と室内の気温差が続いた結果、疲れがピークになり夏バテになってしまいます。訴えは「何となくだるい」「吐き気がして食欲がない」「何事にもやる気が出ない」「下痢気味」などですが、何と言ってもこの方のように「疲れがとれない脱力感」が多いです。こんな時はぜひ漢方薬を試してみて下さい。よく効きます。この方には清暑益気湯がいいでしょう。暑熱で発汗し急速に脱水を生じた時に速効性があります。日射病、熱射病、小児夏季熱、その他の夏季の感染症に用いて、疲労感や無力感、腹痛、下痢などを治してくれます。他には藿香正気散もいいでしょう。小鳥の名前のような漢方薬ですが、夏の感冒・暑さあたり・吐き下し・暑さ負け・夏の下痢 等に対する代表薬で、それに伴う全身倦怠も改善してくれます。また、症状が長引いて慢性的な疲労感がなかなかとれない人には補中益気湯がいいでしょう。この漢方薬は夏バテだけでなく、もともと虚弱体質で病後や手術の前後、妊娠中、産後の回復期などにもよく用いられます。
漢方薬は長くのまないと効果が出ないと思われがちですが、今回ご紹介しました補気剤(体の弱った“気”を補う)は、即効性がありすぐにでも効果が実感できます。
さて今年の夏も暑そうですね。クーラーの温度は28℃ぐらいが適温ですよ。

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