Vol.110「内臓脂肪」

Q.(46歳男性)健康診断で内臓脂肪が多いですねと言われました。以前から体がだるく、朝起きにくかったり、首の凝りつけやめまい、目の疲れに悩んでいます。内臓脂肪と何か関係あるのでしょうか?少しでも体調が良くなればと思い相談に伺いました。化学薬品を長期に飲むのも不安です。漢方薬でいいのがありますか?

A. 脂肪細胞は私たちの生命のエネルギーである中性脂肪を貯える貯蔵庫で、腸間膜にある内臓脂肪と皮膚と筋肉の間にある皮下脂肪があります。近年、糖尿病や高脂血症(進行すると全身の血管の動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす)、高血圧、生活習慣病の要因になりますが、動脈硬化などを起こしやすいのはこの内臓脂肪型肥満で、お相撲さんのような皮下脂肪型肥満はリスクが少ないことが明らかになっています。
 原因は過食や運動不足と言われていますが、近頃はストレス太り(内臓の代謝が悪くなる)も多いようです。特にお酒を多く飲み出して太りだしたという人は内臓脂肪を疑って下さい。
 漢方では、体内にたまった余計なものを痰・瘀と言い、脾胃(胃腸)や肝の働きを高め、新陳代謝を促進し、根本的に治してゆきます。
 ご相談の方は46才男性、ワープロ中心の仕事で、小太りタイプ。この方には肝機能を助ける柴胡剤の大柴胡湯がよく効くと思われます。もし便秘がちで俗にいう太鼓腹・重役腹タイプの人の肥満性卒中体質者には防風通聖散が用いられます。排便を促し食毒や水毒などの鬱滞を排泄、解毒します。
 他には、田七人参、三黄丸、桃核承気湯なども用いられますが、長期化している場合には駆瘀血剤の桂枝茯苓丸も併用すれば効果的ですね。この内臓脂肪からの高脂血症改善で一躍有名になったのがEPA(青魚の成分エイコサペンタエン酸)とビタミンEです。ビタミンEはカツオ、マグロ、ウナギ(今や高級魚ですが)などに多く、植物油ではゴマ油に特に多く含まれています。
 さて、昔の人には内臓脂肪からの高脂血症はほとんどなく、検査方法もないぐらいでした。今はもう国民病と言えるぐらいです。やはり食生活の変化と足を使わない車社会の影響ではないでしょうか?毎日、公園などで背筋を伸ばしてしっかり歩いている人を私は「えらいなぁ」と感心して見ています。

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