2年程前の早朝に紀三井寺公園を散歩し、すがすがしい青空を見上げていますと私の左目に急に黒い点と時折黒い帯状の線がサーっと流れました。目を動かしても追いかけてきます。私は「ふうむ、これが飛蚊症だな。」と直感しました。
痛くも痒くもないのですが、左目の黒点が邪魔でしょうがありません。2~3日して友人の眼科医を訪ね診てもらうと、これは老化だから薬もなく治療法もない。我慢して慣れるしかないと言います。私は気落ちしながら病院を出ました…。
今回はこの飛蚊症のお話しです。この飛蚊症の原因は水晶体の後ろの硝子体にあります。私達の目の中は空洞ではなく透明なゲル状の硝子体(しょうしたい)という物質で満たされています。この部分に濁りができたり、加齢とともに萎縮し一部網膜から剥がれるとその部分が網膜に映り黒い点や線のように見えてしまうのです。要注意なのは網膜剥離や網膜裂孔といった網膜自体の病気から起こる飛蚊症です。ある日突然ピカピカと視界が光って見えたり、時間とともに視界が狭まるという症状を伴います。
さて治療法ですが、硝子体の濁っている部分を切除する手術もありますが、よほど重篤でない限りは行われません。ですからほとんどが自然治癒を待つしかありません。わたしは「薬も治療法はないよ」と言われて、これは自力で一日でも早く治そうと思い漢方薬を服用し、知り合いの鍼灸師に経絡針をお願いしました。いつも言うことですが漢方医学では病気は体全体を考えます。目は肝経に属します。
肝は「血を蔵し、疏泄を主る。筋を主り、目に開竅する」機能があるので情緒の変動・自律神経の失調・循環障害・目の障害などの改善のために、色々な処方が伝えられてきました。目に現われてはいますが、そこにつながる肝からの血流を改善し、濁りや瘀血を去る、そして目に栄養を送り改善を目指します。
それでは代表的な漢方薬をご紹介します。
・杞菊地黄丸・・・・目がかすむ、目がくらむ、まぶしい、目の乾燥感や痛み、視力減退、頭痛などがある人の飛蚊症に用います。
・血府逐瘀湯・・・・慢性的に反腹する出血や、色素沈着、小血管の拡張など欝血、充血、血瘀体質の人の飛蚊症に。
・八味地黄丸・・・・高齢者で疲れやすく、特に目には白内障、緑内障、硝子体混濁、調節衰弱、眼底出血(網膜出血)にも用いられます。
飛蚊症はいつも視界に見えるものだけに、鬱陶しくてノイローゼになってしまうケースもありますが、多くが無害なものです。
飛蚊症でお悩みなら一度、漢方薬を試してみて下さい。