Vol.94「心の病気Ⅱ」

心の病気には統合失調症、うつ病、神経病、心身症他など多くの種類があります。
 統合失調症は思春期から20才代の人に多くみられ、現実と非現実の区別ができなくなり、声が聞こえる幻覚や妄想、意欲減退、感情鈍麻、自閉的などがあらわれてきます。一方、神経症(ノイローゼ)は統合失調症とは別の病気で、不安という症状であらわれます。戸締りを何度も確認しないと気が済まない強迫神経症や、不安にかられ動悸や冷や汗、呼吸困難、パニックといったような不安神経症、人の視線が気になる対人恐怖症、他には高所、閉所、暗所恐怖症などがあります。
 さて、心の病気で一番多いのが心身症です。これは神経症と違って心理的、精神的な要因が原因となって身に異常が起こる病気です。主な心身症として皮膚系にはアトピー性皮膚炎、多汗症、慢性蕁麻疹、円形脱毛症など、呼吸器系ではチック症、腰痛、筋肉痛、脊椎過敏症など、消化器系では胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸炎など、摂食異常では神経性食欲不振症、過食症、です。この他にも月経障害、神経性頻尿、耳鳴り、緊張性頭痛などが知られています。
 残りは「うつ病」です。気が滅入って悲観的になり何もしたくなくなってしまう病気です。思春期と初老期に多く抑うつ気分、悲哀、寂寥感、不眠、自殺願望等が現われます。最近は幸せホルモンのセロトニン再吸収阻害薬(SSRI)が効果を上げているようです。
 さて現代では、皮膚病は皮膚科、お腹は胃腸科、風邪は内科という治療になりますが、案外、心の病気からの疾病も多いものです。2000年前の漢方の古書「黄帝内経素問」に「恬憺(てんたん)虚無ならば真気これに従い、精神内に守る、病安(いず)くんぞ従い来らんや..」とあります。これは「心がけは安らかで静かであるべきで、貪欲であったり妄想してはならない。そうすれば真気が調和し、精神もまた内を守って散じることはない。このようであればどうして病気になるであろうか。」と心がけと体の病気についての養生法をおしえています。“心と体は不可分”という考え方です。昔から漢方には心の病気には沢山の処方が用意されています。
それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

柴胡加竜骨牡蛎湯・・・・イライラ、不眠、動悸、のぼせ、落ち着かないなどと訴える不安神経症、対人恐怖症、高所恐怖症、強迫神経症の人に。
他に半夏厚朴湯、帰脾湯、甘麦大棗湯、酸棗仁湯、黄連阿膠湯、天王補心丹などがあります。

心の栄養が少ない社会になってきたんでしょうか?
体を温めてほっとしましょうね。

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