Vol.92「凍瘡(しもやけ)」

今年は秋を感じないままに冬になり、朝夕めっきり寒くなりましたね。
今回は冬の定番、しもやけのお話しです。
しもやけと言えば子供の病気の代名詞のようでしたが、最近は高齢者のご相談が多くなりました。
これは手足をめぐる血液の循環が悪いために寒冷に長時間触れると血管が広がったまま麻痺し、血液が固まってしまうためです。貧血症や冷え症の人に多くみられます。特に手足の指、かかと、耳たぶなどの体の末端によく発症し、痒くなったり痛みを伴い、ひどいものでは皮膚がくずれて潰瘍をつくることもあります。
 また、痛みや痒みで夜もゆっくり眠れない人もいます。治療法はビタミンE剤を服用したり、炎症の強い時はステロイド剤などですが、即効性はありません。
 昔から民間療法では「患部に針をさして黒い血を抜く」「温水と冷水に交互につける」「毎日生姜を食べる」などと伝えられてきました。また体の血行を良くするためにトウキ、カラスウリ、ユキノシタ、チンピ(ミカンの皮を2~3個分刻んで入れる)などの薬湯などもよく知られています。中でも特におすすめなのが、乾姜粉末(生姜の乾燥したもの)を5gほど洗面器に入れ、手足が浸かるほどお湯を注いで入浴時に手足を数分つけると効果的です。
 さて、しもやけは治療も予防も同じで血行障害を治さなければなりません。特に漢方では貧血や冷え症の体質を当帰、附子、桂枝、乾姜などの生薬を用いて体を中から温め四肢先端への血行を促進します。寒くなる前から飲み始めると良いでしょう

それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

・当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)・・・・腹中を温め、末梢血管を拡張して四肢の血流を改善します。レイノー氏病や血栓性静脈炎、慢性関節リウマチ、神経病にも用いられます。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)・・・・しもやけ以外にも紫斑病やシミ、皮下出血、打撲、下肢血栓性、子宮内膜症などに用いられ、瘀血(血滞、血寒、うっ血)を浄血します。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・・・・虚証の人で疲れやすく、冷え症で貧血、むくみ、めまい、肩こり、頭痛などの血行障害の体質改善に。
・温経湯(うんけいとう)・・・・冷えのぼせ体質で特に下半身が寒痛し、不性出血や月経異常に悩まされる女性のしもやけの体質改善に。

昔は子供のしもやけは当たり前でしたが、近年、生活様式の変化で子供たちが冬に(夏でも)外で遊ぶことが少なくなりました。「しもやけ」という言葉の意味すら知らない子供もいるようです。

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