Vol.88「クローン病」

 梅雨の季節はうっとうしいですね。
 でも私はこの時期に咲くアジサイが大好きです。特に雨に濡れた青紫色の花が。
 さて先日、昔馴染みの知り合いの方から「孫がおなか痛で学校を休んだんやけど、便に黒い血が混じっていて、びっくりしたんよ。今、腸の検査中なんやけど、もしかしたらクローン病かもしれへんて言われて...」「クローン病て??」
 今回はこのクローン病のお話しです。
 潰瘍性大腸炎と似ている点も多いのですが、明らかな違いは食道、胃、腸の病気で口腔から肛門までの消化管全体に発病することです。
 症状は腹痛、下痢、下血、体重減少、全身倦怠感、口腔アフタなどが主ですが、消化管以外にも関節炎、皮膚炎、ブドウ膜炎等を合併することもありあす。最も発病しやすいところが回盲部(小腸と大腸のつながるところ)で、さらに小腸、大腸のあちこちにびらんや潰瘍がとびとびにみられることも特徴です。今のところ原因は全くわかっていませんが、消化管や腸管の異常な免疫反応と考えられています。
 治療法は、薬物療法では鎮痛消炎剤、ステロイド剤、免疫調節薬などで栄養療法とともに症状が落ち着くまで続けられますが、根治とはなりません。    クローン病は長期にわたって慢性化するので根気よく治療を続ける必要があります。
 さて漢方では、このような原因のはっきりしない病気に対しては、病名ではなく証(病邪の現れ方)を見て、内側からの体質改善を目指します。特に「奇病は血瘀と肝欝を疑え」で神経過敏体質や自己免疫疾患の調節を考え、肝(自律神経)を整えます。また消化管は漢方では脾胃(ひい)と呼びますが、これを温めて血行をよくし、胃腸を強化してゆきます。なかなか完治の決め手のない病気ならば漢方薬をぜひ試してみて下さい。驚く程の効果がみられることも多いものです。
 それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

六君子湯(りっくんしとう)・・・・貧血気味で慢性胃腸炎、胃アトニー、慢性腹膜炎、胃潰瘍、消化不良症、自家中毒症などに用いる。

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)・・・・胃腸神経症、胃・十二指腸潰瘍、しぶり腹、腹痛、下痢等をくり返す過敏性結腸症候群などの人に。

四逆散(しぎゃくさん)・・・・自律神経失調を伴う神経性胃炎、腹張、下痢、便秘交互にくるような人に。

逍遙散(しょうようさん)・・・・精神的緊張や情緒変動とともに発生する腹痛、腹鳴、下腹部の下墜感、下痢などで一日に何度も生じるような人に。

どんな病気でも心と体はつながっているんですね。

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