Vol.87「掌蹠膿疱症」

 あまり訊き慣れない病名ですが昔からこの病気で長年悩んでいる方が割と多くいらっしゃいます。手のひらや足のうらに小さな水疱や膿疱が次々とでき、しばらくするとその水疱や膿疱がやぶれ、血が出たり膿がジュクジュクと出て手や足のうらが腫れ、皮膚がはがれ落ちてしまう難治性の慢性炎症性疾患です。
 症状を和らげるためにステロイド剤を用いますが完治せず、ひどくなると爪がはがれて剥離し、足のうらも割れて痛くて歩けなくなったり、鎖骨や肋骨に関節炎を起こし胸、肩、首、腰等に痛みを発生することもあります。実際に患者さんの症状をみると本当に痛々しいものです。
 原因として考えられているのが扁桃腺、歯の問題、金属アレルギーなどですが、本当のところはっきりわかっていません。どうして手や足のうらだけに発症するのかさえ理由不明です。
 最近ではビオチンというビタミン欠乏により免疫異常として、ビオチン剤を処方する病院もあるようですが完治しません。実際、本症とともに糖尿病、高脂血症、クローン病、IgA腎症、甲状腺機能異常などを併発している人も多いようです。
 さて、漢方医学では病気を患部だけでなく全身的に見つめて歪みを治してゆきます。この掌蹠膿疱症のようにウイルスや細菌によって起こる皮膚病ではなく、原因の特定が難しい疾患には漢方薬が著しい効果を発揮します。
 昔から奇病は血瘀と肝鬱を疑えと言われます。自律神経の乱れと血行障害のことです。特に手のひらや足のうらは皮膚のなかで最も汗をかきやすく、血液や水分循環の盛んな場所で、自律神経が主に支配しているところです。 病院治療で芳しくない人は一度漢方薬を試してみて下さい。良い効果が得られるはずです。
 それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

温清飲(うんせいいん)・・・・慢性に経過した頑固な皮膚粘膜の疾患で、特に皮膚そう痒症、乾癬、ベーチェット病、掌蹠膿疱症など。

消風散(しょうふうさん)・・・・局所に赤発と熱感、じん出液が多いか、あるいは水疱を形成し、ほてりや熱感が強いとき。

越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)・・・・水疱、浮腫、じん出液の多い、びらんなどを伴う皮膚炎に。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・・・・虚証の体質者で貧血、冷え性、全身倦怠、むくみなどを伴う女性の掌蹠膿疱症に。

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)・・・・化膿性湿疹のアレルギー体質改善薬に。
 
掌蹠膿疱症は水虫と間違われやすく、水虫薬をつけるとかえって悪化します。注意しましょう。

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