11月になり朝夕寒くなってきましたが、寒くなるとアトピー性皮膚炎はカサカサしてかゆみが悪化しやすいものです。反対に年中、皮膚がジクジクしてかゆいのが脂漏性皮膚炎です。新生児から生後3カ月ぐらいまでの赤ちゃんと思春期以降の成人に多くみられ、赤ちゃんではほとんど自然治癒しますが、成人では慢性化することが多いようです。
特に皮脂腺からの分泌が多い、頭皮や顔(鼻の周りなど)によく起こります。患部から淡黄色の脂肪油様の分泌物が滲出してかゆく、やがてはかさぶたになり、これが繰り返されて慢性化し、頭部からはフケも多く出るようになります。
原因は、赤ちゃんでは毛穴が未発達なため、皮脂が毛穴に詰まりやすいのではとみられていますが、成人では皮脂や汗を好むマラセチアという真菌が異常増殖して肌に炎症を引き起こすと考えられています。しかし、はっきりとした原因はまだつかめていません。
この脂漏性皮膚炎は繰り返し再発し、慢性化していくことがほとんどで、現在の治療法はステロイドホルモン剤と抗真菌薬、他にはビタミン剤や抗ヒスタミン剤を用います。セルフケアとしては、やはり皮膚の清潔と脂質や糖質の過食を避け、ストレスをよく発散することですね。
赤ちゃんの乳幼児湿疹で、アトピーと間違えてステロイドホルモン剤を長期に使用する方がいらっしゃいますが、発育過程のちょっとした異常で、成長とともに治っていきますので心配いりません。
しかしアトピーや乾癬(かんせん)、アレルギー性皮膚炎で相談にお見えになる方の中には同時に、この脂漏性湿疹が頭部や髪の毛の生え際に発生し「頭がかゆくてフケがよく出ます」と言われる方が多くいらっしゃいますが、皮膚炎や、体のかゆみからくるストレスからのホルモン異常が考えられます。
さて漢方薬ではホルモンは腎に属し、その調節は肝が主(つかさど)るとみて、柴胡、芍薬、黄?などで自律神経を調節し内分泌を整えて体の内から治していきます。また体表面の血行を良くし、うっ血を散らし防風、桜皮などで皮膚のかゆみを鎮めます。服用して数カ月もすると良い効果が出てきます。ぜひ試してみてください。
それでは代表的な漢方薬をご紹介します。
〇桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)・・・幼児の脂漏性皮膚炎に、子どもさんが母乳児であれば母親が飲み母乳から。
〇十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)・・・化膿性疾患、癰、?、湿疹、じんましんなどを繰り返すアレルギー体質の改善に。
〇逍遥散(しょうようさん)・・・ゆううつ感、イライラ感、怒りっぽい、眠りが浅いなどの自律神経失調症で、女性では生理不順でホルモン分泌が不安定な人の脂漏性皮膚炎に。
皮膚はよく「内臓の鏡」と言われています。早めの治療を心掛けましょう。