Vol.77「眼底出血」

 ことしの梅雨は例年になくうっとうしくて体調の悪い人が多いと思います。私も低血圧体質なので、こたえています。梅雨明けの爽やかな青空が待ち遠しいですね。
 私は毎朝、紀三井寺公園を散歩しています。6~7月は毎年たくさんのコムクドリやツバメ、名も知らぬ鳥たちが元気よく虫をついばみヒナを育てています。そんなある日、公園でふと空を見上げると私の左目に黒い墨のような影がサーっと流れ、小さな黒点が何十個も浮き上がり、青空がかすんで見えました。「おや、どうしたんだろう?」と思い、目をパチパチしましたが黒い邪魔者は消えてくれません。「ふぅむ。これが長年患者さんから聞いてきた飛蚊症か」と心に浮かび、気持ちがガクッと落ち込みました。小雨の帰り道、車から見える風景が余計にぼやけ不安な気持ちのまま、わが家に帰りました。
 さて、眼球の奥の網膜に出血することを眼底出血といいますが、原因として一番多いのが糖尿病や高血圧症です。他には貧血や腎臓病、網膜剥離やブドウ膜炎といった目の病気からの出血などがあります。
 症状としては、目の前に虫が飛んでいるようなちらつきを感じる飛蚊症が初期で、進行するとその数がだんだんと増え視界の中に暗いところができます。さらに悪化すると、視力の低下や網膜剥離も起こってきます。対症療法として止血剤や血管強化剤、出血した血液の吸収剤、抗血小板剤などですが、効果がない時はレーザー光線を使う光凝固療法になります。眼底出血や網膜剥離は再発を繰り返すと失明に至ることもあるので、定期的な眼底検査も大切です。
 さて、漢方薬でも原因となる病気の治療を本治としますが、今すぐには出血を優先します。
 それでは、代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

〇桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)・・・打撲や皮下出血、静(動)脈瘤などの?血症状に用い、目には慢性期や難治性の時に他の漢方薬を併用する。
〇黄連解毒湯(おうれんげどくとう)・・・高血圧体質の人の急性期の諸出血(吐血、鼻出血、眼底出血等)に冷やして服用する。
〇七物降下湯(しちもつこうかとう)・・・体力がなく血の巡りが悪い人で、のぼせ、ほてり、めまい、ふらつき、耳鳴りなどの高血圧症体質の人の眼底出血に。日本漢方の大家、大塚敬節氏が自身の高血圧、眼底出血を治療するために創見した処方箋。

 私の左の目の飛蚊症はどうやら老化からきたようで、3カ月ほどたってだんだん少なくなってきました。もちろん漢方薬を飲んでいます。

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