Vol.73「心臓神経症」

今回は、この不安神経症の一つである心臓神経症のお話です。心臓神経症とは、心臓には異常がないのに不安や欲求不満,自分が病気ではないかという思い込み、うつ状態などが原因になり、長期にわたって動悸や息切れ,胸の痛みなどを訴える病気で、最近は働き盛りの年齢層に増えているようです。

原因として性格上、優等生タイプの人や,内向的,神経質で不安な気持ちになりがちな人に多く、特にストレスによって心臓の働きを活発にする交換神経が刺激され、動悸や息切れが起こります。

心臓病との違いは、安静にしている時でも動悸,息切れ,胸痛が起こることです。また症状が現れると大変不安になり、その不安がもとで抑うつ状態になってさらに症状が悪化します。

現在、治療法はカウンセリング等で、病気の原因は心理的なものだから心臓そのものに障害はないことを理解させることとともに、症状を除くために抗不安薬、抗うつ剤、自律神経失調薬を使います。

ちなみに、心臓神経症の原因となるストレスとしては、家族の病気,子どもが家を去る,職を失う,新しい仕事に就く,配偶者の死などが多いようです。

さて、漢方医学では心(シン)は「血脈を主る」「神を主る」と考えています。血管と中枢神経は心が調節しているということです。ですので感情や精神の乱れは心(心臓)の乱れになり、動悸や息切れ,胸痛になって現れるとみるのです。

漢方は、脳の興奮症状である不眠,多夢,驚きやすい,動悸,不安感,焦燥感などを鎮める安心薬を用いて治していきます。副作用もほとんどなく、確かな効果が期待できます。

それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)…元気がなく、顔色悪く、時には手足がしびれるような人の不安感、不眠、多夢、動悸、発作性頻脈などの症状に。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…いらいら、のぼせ、落ちつかない、胸部が張って苦しい、疲れやすいなどで、不安神経症、対人恐怖症、強迫神経症、気が小さいなどの心臓神経症の人に。

帰脾湯(きひとう)…疲れやすく貧血気味、軟便~水様便、健忘、頭がふらつく、ぼーっとする。眠りが浅い、息切れ、動悸を訴える心臓神経症に。

ストレス発散には、十分な睡眠や時間をかけたゆっくりした入浴、食事を楽しむなどの生活スタイルの見直しも大切ですね。

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