今回は、この急性鼻炎を繰り返し慢性化してしまった慢性副鼻腔炎(蓄膿症)についてお話しします。
私たちの鼻腔の周りには、左右に4対の空洞(計8個)の副鼻腔があり、ここに炎症が起きて、うみがたまる病気を蓄膿症といいます。
アレルギー性鼻炎や風邪からの鼻づまりが治り切らなかったり、目や耳などの鼻周辺組織に病気がある場合、または糖尿病などの慢性病体質などから起こることがほとんどです。体質的に鼻中隔に曲(わんきょく)があったり、副鼻腔から鼻腔への排泄障害のある人も蓄膿になりやすいといえます。
症状は、鼻づまり、粘りのある鼻汁の他に嗅覚の低下、いびき、頭重などがあり、ひどい時には膿様の分泌物が出て悪臭を放つこともあります。また集中力や根気がなくなり、仕事や勉強の能率も悪くなりがちで見た目以上につらい病気です。
さて、一般的な治療法は抗生物質やタンパク分解酵素剤などの内服や、膿を出すための洗浄が中心になりますが、あまり効果がない時は手術をします。部分的な保存的手術と、大部分取ってしまう根本的手術ですが、多くの場合再発するようです。いずれにしても一時的な治療では根治しにくい病気といえます。
漢方では、蓄膿症に対して第一に免疫力を高めて、排膿を促し、化膿しにくい体質に改善していくことで、根本治療を行います。手術を受けようかどうか迷っている時には、ぜひ一度漢方薬を試してみてください。半年か一年ぐらいの服用ですっかり治ってしまう場合が多いようです。それでは漢方薬をご紹介します。
葛根湯加川辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)…鼻づまりがひどいため頭痛、頭重をよく訴える人に。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)…手足の裏に汗をかきやすく化膿しやすい人に。
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)…アレルギー体質の人の蓄膿症に。
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)…特に鼻づまりがひどく息もできないような人に。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)…便秘がちで肥満体質の人で、特に鼻汁がのどに流れ落ちるような時に。
川弓茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)…鼻づまりがひどく目の周辺まで痛むような時に。
以前、慢性副鼻腔炎で嗅覚を失った方から「死ぬまで一度でいいから花の香りを感じたい」と伺ったことがありました。日頃普通に匂いを感じられることは、とてもありがたいことなんですね。