さて今回は、意外と知られていない手湿疹についてお話します。女性に多い主婦湿疹もこの手湿疹の一種です。症状は手の甲、指の背面、側面に赤み、丘疹が現れ、かゆくて皮膚をかきむしってしまうほどです。よく見ると皮膚の表面近くに小さい水疹が無数にできています。どうやらこれがかゆみの原因のようです。夜になると特にかゆみが増します。進行すると指の腹面や手のひらがカサカサになって乾燥し、部分的にひび割れを起こして痛み、進行性指掌角及症になっていきます。この手湿疹はなかなか完治しないので、何年も苦しんでいる人もたくさんいます。
原因もはっきりと分かっていませんが、水仕事や洗剤をよく使う職業の人、アトピーやアレルギーで体質的に皮膚の免疫力が弱い人、ゴム手袋や紙、ビニール製品を扱う人などに多く発症しています。先日も手湿疹で来局された方のお仕事が一日中ゴム手袋をしての作業でした。治療法は、皮膚科ではほとんどがステロイドホルモン剤や保湿剤、抗ヒスタミン剤の飲み薬です。しかし毎日のステロイドの使用により一時的にかゆみはましになっても、ますます皮膚は黒ずんで薄くなりもろくなっていきます。東洋漢方では2~3カ月を目安としてかゆみを軽くし、炎症をしずめる対症療法と併行して皮膚の血液循環をよくし、体質改善をすすめていきます。それでは代表的な漢方薬を紹介します。
十味敗毒散(じゅうみはいどくさん)…手湿疹の一般的症状に用います。慢性化した時にも効果があります。
四物湯合苡仁(しもつとうごうよくいにん)…普段から貧血気味で手足の冷える人、肌は色つやが悪く乾燥してカサカサしているような時に。
湿清飲(うんせいいん)…手のひらに熱感発赤、充血がある時。
消風散(しょうふうさん)…幹部が湿疹化し皮膚が丘疹傾向を呈し、湿潤、はれ、かゆみがはなはだしい時によく効きます。
紫雲膏(しうんこう)…手湿疹の外用軟骨に用いて大変効果があります。これ以外にもひび、あかぎれ、あせも、ただれ、やけど、痔核の疼痛にも効果を発揮します。
民間薬としてはクマ笹エキスの内服と塗布をおすすめします。
手湿疹は何といっても予防が大切です。水仕事の時は、木綿の手袋の上にゴム手袋を有用する、洗剤は薄めて使用し、最後によく洗い流す、夜はクリームや軟膏などで皮膚の表面の脂肪膜を補給するなどを習慣づけましょう。