今回は貧血症についてお話します。一口に貧血と言ってもその原因はさまざまです。
①輸血が必要な出血性貧血②ビタミンB12あるいは葉酸不足の悪性貧血③赤血球の寿命(約120日)が短くなって早く壊れてしまう溶血性貧血④骨髄での造血能力が低下して起こる再生不良性貧血⑤慢性腎不全やがん、膠原病、妊娠などの症状として起こる二次性貧血⑥鉄の不足で赤血球が薄く小さくなって起こる鉄欠之性貧血などに分類されています。この中で鉄欠之性貧血は女性に多く月経、妊娠、授乳等で失われる鉄分は男性の2~4倍といわれています。これらの貧血の一般的な症状としては、顔色が悪い、立ちくらみがする、どうき、息切れ、頭痛、めまい、耳鳴り、脱力感、爪が薄く割れやすいなど、多種多様です。現在の治療法は輸血、ビタミンB12、葉酸の補給、ステロイドホルモン剤、男性ホルモン剤、鉄剤の補給などになります。漢方治療では体全体をみてその働きを考え、特に胃腸からの栄養吸収を高めて貧血症の体質を改善していきます。それでは代表的な漢方薬を紹介します。
帰脾湯(きひとう)…体がだるく、疲れやすくて不眠傾向がある人に。
六君子湯(りっくんしとう)…胃アトニーや胃弱で疲れやすく昼食後などにひどく眠くなるような人に。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…血色が悪く女性の場合は月経障害があり手足の冷える人に。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)…病後や術後の体力低下、疲労感、食欲不振、寝汗などの慢性的な虚弱体質の人に。
人参湯(にんじんとう)…顔色が悪くもともと胃腸虚弱で低血圧ぎみの人に。
このほかに貧血を治す鉄分の多い動物のレバー、プルーン、ホウレンソウ、ひじき、キクラゲ、昆布、ローヤルゼリー、ごまなどを多くとるようにしましょう。日ごろからビタミンCを十分に補給することも大切です。また食事中のお茶は控えめにします。鉄分の吸収が悪くなるからです。
民間薬として有名なのがクマ笹です。クマ笹は緑の血液と言われ葉緑素の増血作用や末梢(まっしょう)の血管を拡張して体のすみずみまで酸素を運んでくれます。またビタミンABCEや鉄分などの栄養素をたくさん含んでいるので、貧血には大変有効です。
さて貧血症について述べてきましたが、これから胃腸のこわれやすい季節です。バランスのよい食事と質のいい睡眠を心がけましょうね。