加齢とともに頭髪が徐々にさびしくなるのは、なんとか悪戦苦闘しながらもくい止め、発毛、育毛を促進させることができますが、円形脱毛症は何の前ぶれも、自覚もなく、ある日突然に親指大か10円玉くらいの大きさで円形に毛が抜けてしまう病気です。
まれに頭部全体が全部抜け、さらに眉毛やひげ、体毛まで抜け、つるつるになってしまう悪性のものもあります。1カ所の単発型よりも2から3カ所の多発型が最もよくみられます。放置しても数カ月で治りますが再発しやすく、多発型や範囲の広いもの、悪性のものは数年以上かかることもあります。
原因は精神的な悩みやストレス、自律神経失調症、甲状腺ホルモン異常など考えられていますが、なぜ毛根部が破壊されるのかは不明です。経験から考えますと、いろいろ気をもんでとりこし苦労をしている人、いわゆる不安神経症の人に多く発症しています。
3から4カ月ほどして治っても、何かのストレスを受けると再び一夜にして脱毛してしまう人もよくみます。治療法は外用ステロイド剤が中心で免疫抑制剤や血行をよくするための血管拡張剤が使われます。物理化学療法としては局所を凍らせるドライアイス圧抵法、かぶれ薬を用いるDNCB感作法、紫外線照射法などが用いられます。
漢方では毛髪は血餘といい血液の一部とみなし、腎が支配するものとしています。ですから脱毛を腎虚(精力の弱り)と血行不良として治療していきます(補腎活血)。日本古来の民間薬としては、苦くて有名なリンドウ科のセンブリがよく知られています。名前は聞いたことがある人も多いと思います。市販のヘアートニックにセンブリの花を細かく切って配合し、よくふって毎日1回頭部を軽くマッサージすると効果があります。それではいつものように代表的な漢方薬をご紹介します。
柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…神経衰弱ノイローゼ、ヒステリー、不眠症、怒りっぽい、不安感などの神経症的な人に。円形脱毛症に最もよく用いられます。
葛根湯(かっこんとう)…原因もなく、突然丸くはげてしまった急性の人、頭痛、肩こり症の人に効きます。
加味逍遙散合四物湯(かみしょうようさんしもつとう)…冷え性、貧血、体力虚弱で精神不安や、いらだちなどの血の道症の人に。
最近ストレスの多い生活のためか、女性の円形脱毛症の方が多く見られるようになりました。日々の中にリラックスできる時間を持てるように心がけましょうね。