近年、老人認知症が大きな社会問題となっています。厚労省の推計では65歳以上の老年期認知症は、現在約220万人(2009年)と言われ、今後もさらに急増が予想されています。これといった的確な治療法が確立されておらず、何とか進行を遅らせるという方法がいろいろと考えられています。
認知症は脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症に大きく分けられています。が、いずれも脳の老化が基本にありますので、脳の血行を良くして老化を抑える事が肝心です。
さて、認知症の初期は、うつ状態、意欲減退などが現れ除々に幻覚、異常行動(徘徊)などが見られます。さらに進行すると今言われたことや、食べたことを忘れ、また食べようとするなどの記銘力障害、2、3日前のことを忘れてしまう記憶力障害、自分の居る所が分からず身の回りの人の事が分からないなどの見当識障害が現れてきます。こうなると認知症が相当進んでいる状態です。
治療法は今のところ、予防が第一です。普段から生活習慣病の予防や治療、運動の習慣、脳の活性化、食習慣の見直しなどで認知症になるリスクを減らせることが分かっています。
予防法は次の通り。
▽メタボにならないよう心がける…高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病にならないように注意する。
▽適度に運動を行い足腰を丈夫にする…1回20分程度、1日3回の散歩でよいから毎日続ける。適度の運動は脳血流の改善、血圧安定、血中コレステロールの低下が得られる。
▽脳を刺激する…日記をつけたり新聞や本を声を出して読む。将棋、囲碁などを楽しみ、楽器演奏や歌を歌う。ガーデニングなどがよいと言われている。
▽食事の内容を心がける…甘い物、塩分や動物性脂肪を控え目にして野菜、海草類、青魚を多くとる。
治療薬としては、西洋薬では抗精神病薬や抗うつ薬、抗不安薬などが使用されますが、漢方薬では全体を考え、体の回復力や自然治癒力が活性されるようにします。
代表的な漢方薬は抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴけんげ)、釣藤散(ちょうとうさん)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などです。あるTV番組のアルツハイマー特集で驚くほど効果がある漢方薬として放送されたので、ご存知の方もおられる事でしょう。しかし認知症の患者さんはそれぞれ体質が異なり、症状の現れ方も変化しますので、漢方の専門家とよく相談して下さい。
何よりも大切なことは普段から明るい前向きな気持ちで過ごすことに努めて、心の健康を高める生き方をしていくことです。
次回は「痛み」についてお話しします。