めまいは、患者にとっては何とも不安な症状で、このまま意識不明になって死んでしまうのではないかと思うような時もあります。めまいを訴えて病院の耳鼻咽喉科を訪れますと、脳や耳、平衡機能などいろいろな検査を受け異常が認められない時は、あっさりとメニエール病と診断され、乗り物酔いのお薬を処方されるようです。
このメニエール病は1861年、フランスの医師、メニエールが「めまいは内耳の病気から起こる」と発表してから、あたかもめまいの代名詞のように使われるようになりました。めまいの発作が突然起こり、片側だけの難聴や耳鳴りを伴います。
発作が起こると歩くことも立っていることもできないくらいになります。現在、この病気の治療の決め手になるお薬は、まだありません。
発症は内耳にある平衡感覚器の一部に余分なリンパ液がたまることによって起こりますが、どうしてこのリンパ液がたまるのかは明らかではありません。主な原因としては、疲労が最も重要視されていて、肉体的な疲労の上に精神的な疲労が重なったときに発症しやすく、度重なる仕事上のトラブル、家庭内での不和などが言われています。
さて漢方では、古くからめまいは水毒であると言われてきました。言うまでもなく、リンパ液は体液の一部であり、体液のことを津液(しんえき)とも言います。体に役立つよい水分のことです。
メニエール病の治療には、この体の水分調節を主に考えて、肺や胃腸、腎臓の働きを元気にする生薬を配合した漢方薬を処方します。また、いつも言いますが漢方では体全体を見ますので、精神的ストレスに弱い人や貧血気味の人などには体質改善薬を併用してもらえば、メニエール病が起こらなくなってしまう人が多いようです。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。
苓桂朮甘湯(りゅうけいじゅつかんとう)…急に立ち上がったり顔を上げると目の前が暗くなるような立ちくらみで尿の出が悪い人に。
沢瀉湯(たくしゃとう)…回転性のめまいで発作時に吐き気を伴うような時に。メニエール病にはこの薬が最もよく用いられます。
真武湯(しんぶとう)…手足の冷えやすい人で全身倦怠感が強く歩いている時にクラッとするようなめまいに。
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)…食後に眠くなりやすく軽いめまいを繰り返す人に。
文明の進んだ国ほどこの病気が多いことからも複雑な生活環境と何らかの関係があるようです。また几帳面で神経質な性格の人、不安神経症の人にも多いようです。自分をゆるめてあげることも大事なことですね。