Vol.136「しもやけ」

Q.毎年できるひどいしもやけに悩んでいます。冬になると手足の指が赤黒く腫れて痒くなり、かきむしって傷ができるたびにばんそうこうを巻いています。爪もきれいに生えて来ず変形し、ヘバーデン結節で指の関節が外側に曲がってしまい、見た目にもとてもつらいです。少しでも良くなるようにとご相談に伺いました。
 何か私に合う漢方薬はありますでしょうか? (70代女性)

A.しもやけと言えば子どもの病気の代名詞のようでしたが、最近は高齢者のご相談も多くなりました。今回のご相談は冬に定番のしもやけですね。しもやけは手足を巡る血液の循環が悪いために、寒冷に長時間触れると血管が広がったまま麻痺し、血液が固まってしまうために起こります。貧血や冷え症の人に多くみられますが、特に手足の指、耳たぶ、かかとなど体の末端によく発症し、痛みや痒みで夜もゆっくり眠れない人もいます。病院ではビタミンE剤を服用し、炎症が強い時にはステロイドホルモン剤となります。昔から民間療法では「患部に針をさして黒い血を抜く」「温水と冷水に交互につける」「毎日ショウガを食べる」などと言われてきましたが、手足の血行障害を治すためですね。
 さて漢方では、しもやけには何を置いても当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅうしょうきょうとう)を用います。この漢方薬は腹中を温め末梢血管を拡張して四肢の血流を改善します。レイノー氏病や血栓性静脈炎、慢性関節リウマチ、神経病にもよく用いられます。また血?(けつお)(古血)を活血して血流改善に用いられる桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を併用するとなお効果的です。この漢方薬はしもやけ以外にも、紫斑病やシミ、皮下出血、下肢血栓症、子宮筋腫や内膜症などに頻用され、?血(おけつ)(血滞、血寒、うっ血)を浄血してくれます。ですから、当帰四逆加呉茱萸生姜湯合桂枝茯苓丸として服用してみて下さい。即効性があり効果は確かです。他には体質によっては当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、温経湯(うんけいとう)なども用いられます。
 昔は子どものしもやけは当たり前でしたが、近年、生活様式の変化で冬に外で遊ぶことが少なくなりました。「しもやけ」という言葉の意味すら知らない子どももいるようです。

PAGE TOP