Vol.124「抗がん剤の副作用」

Q.ことしの初めごろの事ですが、しょっちゅう痰が出たりしつこく咳が続いたりすることに不安を感じ、病院を受診しました。検査の結果、肺腺がんと分かりとてもショックでしたが前向きに治療に励もうと決意し、4月に右肺の摘出手術を受けました。術後はほとんど痛みもなく順調に回復したので2週間ほどで退院しました。その後抗がん剤の服用を始めるとひどい体調不良が始まり全く食欲が無く痩せ始め、何をするにもおっくうで意欲が湧いてきません。脱毛も毎日続いています。体に力が入らず一日中横になって家の中で過ごすことが多いため、気が滅入ってしまいます。先生からは「副作用があまり強いようなら抗がん剤は1回で止めてもいいですよ」と言われたので、今は中止しています。体に力がつくような漢方薬はありませんか?(50歳代女性)

A.現在、日本人の2人に1人はがんになる時代になりつつあると言われています。他人事では済まされません。高度先進医療も進歩していますがまだ追いつかないようです。一般にがんの治療法は手術、抗がん剤、放射線、免疫療法ですが、その治療に伴う副作用に多くの人が苦しめられます。ご相談の方は、術後の第一回目の化学療法治療で重とうな副作用を起こし、苦しんでおられます。毎日、毎時間、大変つらそうですね。
 漢方薬では体が痩せてきた(血虚)、気力が湧かず元気が出ない(気虚)、食欲が湧かない(脾胃気虚)と弁証します。今回は肺からの病気ということでぜひ服用していただきたいのが人参養栄湯です。慢性的な病気から体力気力が衰えて気虚(元気不足)、血虚(体力消耗)になった時によく用いる漢方薬です。病院でも最近化学療法の副作用軽減のために処方するところもあります。肺にかかわらず全身の衰え(がんを含めて)には気血双補の十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)がいいでしょう。もし衰弱し体が痩せ冷えを強く感じるならば、体の奥から温めて免疫力を上げる附子剤(ぶしざいし)、特に四逆湯(ぎゃくとう)や附子理中湯(ぶしりちゅうとう)をお薦めします。また胃腸障害が強く、ムカムカする、下痢が続く、食欲が全く無いなどがあれば六君子湯(りっくんしとう)が有効です。他にもむくみや痛みなどの症状に合わせて五苓散(ごれいさん)や血府逐?湯(けっぷちくおとう)などもよく用いられます。
 さて、体の抵抗力や治癒力を高め、体に本来備わっている生命力すなわち自然治癒力を漢方薬は強くしてくれます。化学療法と共にぜひ漢方薬を試してみてください。

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