Vol.80「白なまず(尋常性白斑)」

 よく老人の手や顔に色が抜け白い斑点ができているのを見掛けます。
 この〝白なまず〟(白斑)は、見た目は皮膚病のように見えますが、細菌やウイルス、あるいはカビ類などの伝染症でもなければアレルギーなどの炎症性の皮膚炎でもありません。一般的に皮膚は内臓の病変を教えてくれる部位でもありますが、この白なまずは、まさにその内因によるもので人にはうつりません。
 子どもからお年寄りまで発症し、ついには全身が白くなってしまう進行性白斑と、急速にかつ部分的に広がり1年前後で進行が止まる分節性白斑があり、そのままの状態が生涯続くと言われていますが、発症した人には大変な苦痛を伴います。
 原因ははっきりと分かっていませんが、自己免疫疾患で肝臓でのメラニン色素をつくる細胞の働きが弱まるために起こると考えられています。
 現在、治療法はステロイド剤、免疫抑制剤などの外用の他にオキソラレン療法が一般的で皮膚が光線に対して過敏になるオキソラレンのローションか、軟膏を白い斑点に塗り1~2時間、肌がピンク色になるくらいまで日光に当たります。
 これを数カ月以上続け色素を再生させます。しかし確実な効果が得られるとは限りません。完治の難しい病気です。
 さて漢方では、この白なまずは円形脱毛症と同じようつうに肝鬱気滞(自律神経障害)と血?(血行不良)、また血虚(部分的さいこしゃく栄養不良)と考えて柴胡、芍やくとうにんぼたんぴとうきじ薬、桃仁、牡丹皮、当帰、地おう黄などの生薬を組み合わせて治療していきます。この白なまずは根治の大変難しい病気で、半年から1~2年で良くなっていく人もいますが、長期にわたり腰を据えて体質改善を続けなければなりません。
 経験的にみて、神経のデリケートな人に発症しやすいようです。
それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

〇柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)・・・イライラ、不安感、のぼせ、不眠、落ち着かないなどで気が小さい人、不安神経症、強迫神経症などで悩みがちな人の白斑病に。
〇血府逐?湯(けっぷちくおとう)・・・?血体質で肩こり、のぼせ、ゆううつ感、イライラ、健忘などで特に皮膚表面の血行不良の人に。
〇桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)・・・冷えのぼせ、肩凝り、めまい、頭痛、生理不順、生理痛、更年期障害などの血の道症の人で慢性化した白斑病に。

 この白斑病は、紀元前1500年頃にインドの聖典に記載されているそうです。大昔から人を悩ませてきたんですね。

PAGE TOP