Vol.78「脱毛症」

 「最近、抜け毛が多くなったみたいだ」とひそかに心を悩ませている人は案外多いものですね。今回はこの脱毛症のお話です。
 一般に頭髪は10万本ほどといわれていますが、一日に50~60本の抜け毛ならまず心配はいりません。しかし、年齢とともに毛髪の成長期(1~7年)と休止期(5~6カ月)のバランスが崩れ、壮年性脱毛症となっていきますが、30才ごろから始まる若年性脱毛症は諦め切れませんね。
 この脱毛の原因にはいろいろな説があります。
 遺伝説、男性ホルモンの異常説、ストレス説、皮脂漏説、頭皮の緊張説などです。ほとんどが頭皮(毛根)への血行障害を起こすものです。しかしどれももう一つ決め手がなく、どうやら原因が複合しているようです。
この脱毛の予防と対策ですが、基本は食事です。砂糖、でんぷん、脂肪、特に塩分はとりすぎないようにして、たんぱく質をより多くとる。次にはマッサージと洗髪で首のうしろまでもみほぐすようにする。そして精神的に緊張し続けることをできるだけ避けるようにすることなどです。
 また毎日の頭皮刺激とブラッシングは欠かせません。10本の指先で毎朝、晩に50~100回ずつマッサージしたり軽くたたいたり。ブラッシングはあまり抜け毛を恐れずしっかりとします。
 さて漢方では毛髪は血余と言い、腎の働きが毛髪を主ると考えます。また腎は体のホルモンを支配しています。そのため脱毛症の人にはまず補腎剤を用います。同時にストレスなどからの頭皮への血行障害には疎肝剤(流れを良くする)を併用することがよくあります。いずれにしても、頭髪も体全体的に内側から見て治療をしていきます。もちろん生活習慣や食事、精神的な面の指導も大切な要因です。
 それでは、代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

〇柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)・・・精神不安がありストレスを受けやすく、イライラ、不眠、動悸(どうき)、のぼせ、落ち着かないなどの不安神経症や強迫神経症の自立神経失調を伴う脱毛症に。
〇当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・・・疲れやすく、冷え性で、貧血、めまい、頭痛、耳鳴り、むくみなどを伴う虚証の体質者で血の道のめぐりの弱い人に。
〇八味地黄丸(はちみじおうがん)・・・漢方で言うところの腎陽虚体質で下半身がだるくて力が入らず、冷えて尿の不調があったりむくんだり、または顔色が白く、元気が出ず、いつも眠くて、寒がるような人の脱毛症に。

 昔から、はげた人に悪い人はいないと言われますが、できる限り髪とは長いお友達でいたいものですね。

PAGE TOP