にきびは「青春のシンボル」とか「若さの証明」などと言われているうちはよいのですが、重症になると大変です。特に若い女性の場合は深刻で、精神的、肉体的に想像する以上に苦痛を感じています。
治療を要する重症例は男性20%、女性18%ぐらいと言われています。今回は、このにきびとおできのお話です。
まず、おできは毛穴に化膿菌が侵入し、腫れて化膿したものでせつ(フルンケル)と呼ばれています。せつがいくつか集まったものが癰(アルブンケル)です。特に顔にできたものを面疔といいます。面疔はひどくなると髄膜炎や敗血症を起こすこともあり危険です。
普通、せつは1~2週間、癰は2~3週間でうみが出て自然に治りますが、化膿がひどくなると、切開することもあります。
一方、にきびは毛穴に皮脂腺の分泌物がたまって脂肪の塊になり、これににきび桿菌(かんきん)が感染して炎症を起こした状態です。
毛穴が詰まると黒い点(脂肪の塊で「面皰」という)ができて、空気を嫌うにきび菌が内側で増殖し、黄色いうみを持った膿疱ができます。顔や頭部以外には胸や背中にできることもあります。原因はおそらくホルモンの作用だろうと言われていますが、はっきりしません。現代医学でも根治は難しく、抗生物質、ビタミン剤、ステロイド軟膏などを使っても思うような効果が得られず決定的な治療法はありません。
このにきびによく似た症状が、女性のあごから首に現れることがありますが、これは生理に異常が多い生理疹です。面皰がないので、にきびと区別できます。
さて毎回言うことですが、漢方医学は病気を全身的に見て歪みを治していくので、全身症状と患部を考え合わせた処方になります。ですから、にきびの軽快と同時に冷えのぼせや、便秘、生理不順などが解消されていく例も多く見られます。証さえ合えば、にきび体質改善に漢方薬は驚くような効果を発揮します。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。
清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)…赤ら顔でのぼせ症の人に。
荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)…局所が腫れて傷み、頭痛、発熱などのある時に。
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)…全身のあちこちに度々おできやにきびができる体質の人に。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)…便秘がちで生理痛がつらい人に。
荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)…手足の裏に汗をかきやすく、にきびが化膿しやすい人に。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…体力がなく冷え性、生理不順、頭痛、めまいなどを訴える女性に。
排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)…ほとんどの化膿症に用います。膿を出し治療を早めます。
若い頃、私もにきびに悩まされ、鏡とよくにらめっこしたものです。その頃漢方薬を知っていればなぁ…。