Vol.63「緑内障」

今回はこの緑内障のお話です。

眼球内の内圧が30~80ミリHgと、高くなって視神経が圧迫され、さまざまな目の障害が現れるのが緑内障です。

私たちの目には角膜や水晶体を潤す房水という水があり、目の隅の偶角(ぐうかく)から吸収されるしくみになっていますが、この流れが悪くなって眼圧が高くなります。

原因はよく分かっていませんが、40歳以上の人に多く発症するので老眼かなと思って放っておくと失明してしまうこともある怖い病気です。他にはぶどう膜炎や角膜炎、白内障手術の後、ステロイド剤の副作用などが知られています。

急性緑内障の場合は、眼圧が急激に高くなるので、目が強く痛んだり、白目の充血、黒目の濁り、頭痛など、症状がはっきり出ますが、慢性の場合は自覚症状がほとんどなく、視野が狭くなるのも、大変ゆっくりなのでかなり進行してからでないと気が付きません。一度狭くなった視野は元に戻せませんから、早期発見が肝心です。

目に異物感やかゆみがよくある、電灯などの明かりの周りが虹色に見える、くもりガラスを通したように見える――なども現れてくるようです。

治療法は急性緑内障では手術になりますが、慢性緑内障では点眼薬です。効果がない時は、内服薬やレーザー治療で房水を流しやすくします。しかし、なかなか完治しません。

さて、漢方医学では常に全体症状から考えて一つの疾患をとらえます。緑内障の防水の流出障害や産生過剰は水毒とみなし、白朮(びゃくじゅつ)、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)などの生薬を用いて、組織間の水を血中に吸収、利尿し、眼圧を下げます。

また緑内障を悪化させる原因の高血圧、むくみ、便秘、肩凝り、頭痛、慢性鼻炎などの改善にも漢方薬は非常に有効です。緑内障でお悩みの方はぜひ眼科治療とともに漢方薬を併用してみてください。漢方治療で効果を発揮することが多いものです。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)…尿量が少なく、むくみ体質の人で、湿疹、じんましん、帯状疱疹、関節水腫などにも用います。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…血圧が高く、いらいら、動悸(どうき)、のぼせ、不眠、慢性疲労などで神経が高ぶる人に。

補中益気湯合五苓散(ほちゅうえっきとうごうごれいさん)…正常眼圧(10~20ミリHg)で、安定期の体質改善に。

現代社会はパソコンなどで慢性的な眼精疲労を多くの人が感じています。「目は心の窓」と言われますが、すっきりした目でいたいですね。

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