今回は気管支ぜんそくのお話をします。
ぜんそくは細い気管支の枝にけいれんが起き、気管支壁が収縮して気道が狭くなるために、呼吸、特に吐く息が苦しくなる病気です。
秋口や梅雨どきなどの季節の変わり目や、気圧の変化などで起こりますが、空気の冷える夜中に突然発作が出やすく、数十分から数時間ヒュウヒュウ、ゼイゼイして呼吸困難となり、激しい咳で苦しみます。
気管支のけいれんと浮腫のため、息を吐くことができず酸素不足から死に至る大変怖い病気です。
原因は体質的にアレルギーであることが多くPM2・5や花粉、ほこりなどの大気汚染、かぜなどの細菌感染、食品によるアレルゲンが主な誘因となります。
現代医学での治療法はアレルゲンを特定した脱感作療法や対症療法としてのステロイドホルモンの内服、発作時の吸入療法などですが、効果は一時的で副作用は重大です。根治するのはとても困難な病気です。
さて、いにしえの医聖・ヒポクラテスが「病気を診るのではなく、病気を持っている人間を見よ」と教えられたそうですが、漢方医学は全く同じような考え方で、一つの病気を全体的な症状から判断して治療に当たります。
特にこのぜんそくは、痰(たん)が異常に発生し呼吸を妨げます。痰はもともと淡(水のこと)の流れが悪くなって水毒(水分の代謝異常)となったものです。
私たちの体の中で水分循環をつかさどっているのは肺、脾(胃腸)、腎とみなして、この三臓を温め、働きを強化し、免疫力を上げて、体質を改善しながら根治を目指します。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)…発作用の薬で、顔を真っ赤にして咳込み、顔や頭から汗をかくような時に。
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)…くしゃみ、鼻水、泡粒のような痰が止まらないような時に。
越婢加半夏湯(えっぴかはんげとう)…激しく咳込んで最後に吐いてしまうような時に。ぜんそくには最もよく効く処方の一つです。
蘇子降気湯(そしこうきとう)…虚弱体質で、足の冷えを訴える人のぜんそくに効果があります。
柴朴湯(さいぼくとう)…最もよく用いられるぜんそくの体質改善薬です。平素から服用していると季節の変わり目にも発作が起きなくなります。
フィギュアスケートの羽生結弦(はにゅう・ゆづる)選手は、幼い頃から小児ぜんそくで苦しまれてきたようです。すごい精神力ですね。