一般的に膀胱炎と言えば尿道からの大腸菌の侵入による感染で、抗生物質やサルファ剤などで対応しますが、意外と知られていないのが今回の膀胱過敏症です。
尿道の検査では異常が見当たらず、しばしば精神的緊張や、疲労、自律神経失調症などによって起こりますが、頻尿、尿意促進、排尿痛、排尿後の下腹部不快感、などの症状は菌性膀胱炎とほとんど同じです。
先日ご相談のお客さんが「バス旅行に行きたいのに行けないし、どこかに出掛ける前には、必ずトイレができる場所を確認しておかないと不安で…」とおっしゃっていました。日常生活に大変負担がかかっています。
この膀胱過敏症は、過敏性大腸炎や神経性胃炎、けいれん性便秘、神経性下痢症などと同じで強い精神的ストレスによって症状が強くなります。現代医学の治療法は、自律神経安定剤や筋弛緩薬になります。
さて、漢方では自律神経の働きを「肝気」といい、イライラや精神不安、ゆううつ感、怒りっぽい、などの情緒失調を肝気胃結と呼びます。この自律神経の緊張をほぐすことを第一に考えて、柴胡や芍薬などを用いて治療に当たりますが、やはりどんな病気にも漢方では体全体を見て処方を決めていきます。特に、この神経症の分野での漢方薬の効果は素晴らしいものがあります。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。
加味逍遙散(かみしょうようさん)…尿がスムーズに出ない、排尿時に刺すような痛みを伴う、下腹部の膨満感、むくみなどや、生理不順がある女性に。
竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)…イライラ感が強く、耳鳴りや不眠などで黄色の帯下、陰部湿疹などを伴う、排尿痛、頻尿、濃縮尿、排尿困難な人に。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)…夜尿や失禁、夜間の排尿回数が多いなどで、寒がりや四肢の冷えを訴える人に。
猪苓湯(ちょれいとう)…尿量が少なく排尿病と残尿感を訴え、時に血尿の見られる時に。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)…特に排尿痛がひどい時に他の漢方薬と併用します。
苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅっかんとう)…新陳代謝が低下して下肢が水中に座っているかのように感じる、冷えの強い人の膀胱過敏症に。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…体質虚弱で疲れやすく貧血、顔や手足のむくみ、生理量が少なく遅れがちな人の繰り返す膀胱過敏症の体質改善に。
さて、この膀胱過敏症になる人は性格が真面目で精神的ストレスに弱い人が多いようです。少しはずぼらぐらいがちょうどいいんでしょうかね。