Vol.51「逆流性食道炎」

さて、今月は食道のお話です。食道の内腔は親指ほどの太さですが、この食道粘膜や胃粘膜にびらんや炎症が起こると、胸やけや、飲み込むときの痛み、つかえ、つまった感じなどの症状が出てきます。

これが食道炎で、原因としては日頃から熱いものや暴飲暴食、アルコールの飲み過ぎ、ストレスからの胃酸分泌過多などが多いようです。よく耳にするのは、胃液や十二指腸液が逆流して起こる逆流性食道炎です。前かがみになったり横になったりすると胸やけや胃痛がよりひどくなります。

病院では「胃の入り口(噴門部)がゆるんでいるから」と言われますが、幽門部の通過障害もあります。

治療法は、制酸剤や粘膜保護剤が有効なこともありますが、決め手にならないようです。また、これとは反対の食道アカラシア(噴門痙れん症)という病気があります。胃の入り口の噴門は、普段は閉じていますが、食べ物を飲み込むと反射的に開きます。この動きに異常が起こった状態です。

原因は自律神経の失調と考えられていますが、はっきり分かっていません。症状は食道や胸のつかえ、固形物より液体の方が通りにくい、吐き気、嘔吐(おうと)などです。

これらは食道がんの症状に似ていますが、食道がんは50歳以上の人に多く、食道アカラシアは20代~30代の人に多く見られます。

また、日によっては全く症状が出ないこともありますが、ストレスや体調の悪い時などに再び繰り返し慢性化する傾向があります。治療法は、流動食や内服薬、バルーン療法などの対症療法になります。

さて、漢方では慢性的な消化管(噴門部・幽門部)のジスキネジー(通過機能障害)を肝気(自律神経)の乱れととらえて柴胡、厚朴、枳実(カラタチの実)などを用いて、ぜん動をスムーズに改善していきます。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)…胃壁や噴門部の痙れんを和らげます。神経性胃炎や妊娠嘔吐(つわり)などに。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…イライラや、ゆううつ感、胸脇部張痛などの自律神経症を伴う神経性の胃・食道炎に。

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)…特にみぞおちのつかえ(心下痞)が強い食道アカラシアに用います。

茯苓飲(ぶくりょういん)…噴門部・幽門部の痙れんをゆるめ、ぜん動を調節して逆流を防ぎます。逆流性食道炎、食道アカラシアの代表的な漢方薬です。

ストレスは消化管によくないですね。

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