「病院で骨密度が少ないと言われて…」と相談にお見えになる方がよくいらっしゃいます。今回は、この骨のお話です。
骨に鬆(す)が入ったようになる老化現象の一つが骨粗鬆症で、特に女性に多く閉経後の女性ホルモンの減少で急速に起こるようになります。若い女性でも卵巣を摘出すると、数年後には同じような症状が起こると言われていますが、男性の場合は遅くて80歳くらいからです。
骨は軟らかいカルシウムと固いタンパク質からできていて、新陳代謝も活発で、1年間で全体の20~30%が新しくなります。厚生省のカルシウム摂取基準は一日600ミリグラムですが、治療や予防には一日800~1000ミリグラム必要です。
骨粗鬆症が起こりやすい場所は背骨で、腰痛や背痛、腰が曲がってくる、などが見られ、進行すると骨がもろくなります。転んだり、時には、咳やくしゃみをしただけで骨折してしまうこともあり、結果、寝たきりになってしまう人もいます。
治療と予防は何と言ってもカルシウムの摂取と運動です。運動による刺激と、日光を浴びることでカルシウムの吸収、蓄積を高めます。以前は減った骨質は増えないと言われていましたが、今では食事療法や薬物療法で増えることが分かっています。
さて、漢方では「腎は骨を主り、髄を生ず」「成長発育を主る」と教えています。ですから、骨粗鬆症や骨軟化症(くる病)、小児や乳幼児の筋肉や骨格の発達不良などに補腎薬の六味丸や鹿茸(シカの角)などをよく使います。また、ステロイド剤の副作用による骨多孔症にも用いて骨の再生、成長を促します。漢方薬はどんな場合でも体の中から治していきます。それでは、代表的な漢方薬をご紹介しましょう。
八味地黄丸(はちみじおうがん)…腰痛、坐骨神経痛、奇形性背椎症、椎間軟骨ヘルニアなど、特に高齢者の骨の老化に。
六味地黄丸(ろくみじおうがん)…小児や乳幼児の首が坐らない、歯が生えるのが遅い、歩き始めるのが遅い、身長が伸びないなどの発育不良にも用います。
附子人参湯(ぶしにんじんとう)…冷え性でやせていて、胃腸が弱く栄養吸収(タンパク同化)の悪い人に。
鹿茸大補湯(ろくじょうだいほとう)…腎気が衰え、体の力、回復力、免疫力が弱く、特に下半身に力が入らないような人に。補腎薬の代表です。
骨の丈夫な人は、歯もいい人が多く、相対的に健康的ですね。昔から子どもの成長にカルシウム食品をよく食べさせましたが、高齢化社会を向かえて中高年も積極的にカルシウムをとりたいものです。