Vol.47「胃下垂・胃アトニー」

「美しくやせたい」が多くの女性の憧れですが、「ふっくらと女性らしく太りたい」と望んでいる方も多くいらっしゃいます。やせ症のほとんどの方が、貧血、低血圧、胃下垂体質です。病気ではないといって、とかく軽視されやすいのが胃下垂です。繰り返す脱肛や子宮下垂による流産などもよく聞きます。今回はこの胃下垂についてお話しします。

一般的に胃角(胃下部の曲がり角)が骨盤より下にある状態を胃下垂と言い、胃筋肉がだらりとゆるんだのが胃アトニーです。原因としては、生まれつきの筋肉虚弱体質、神経質、低血圧症の人が多く、男性よりも女性に多いようです。

胃下垂だけなら自覚症状はほとんどありませんが進行して胃アトニーまでになると、消化不良や胃もたれ、げっぷ、胸やけ、吐き気、食欲不振、食後の腹満などに悩まされます。

もともと病名のつく病気ではありませんので、特別な治療法はありませんが、胃への負担が少ないように1回の食事量を少なくしたり、消化のよいものを食べることが中心になります。また、腹筋を使う日々の運動の継続が胃下垂体質改善に効果が期待できます。

さて、胃下垂症や胃アトニーのほとんどの場合、内臓全体の下垂と一緒に起こります。遊走腎、脱肛、子宮脱、ヘルニア、筋無力症などです。漢方では、これらを中気下陥の証とみて、体全体を考えながら処方していきます。それでは代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…元気がなく疲れやすい、四肢がだるく動作がおっくう、頭痛、立ちくらみ、不性出血を繰り返す、体力、筋力の虚弱な人。

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)…時に激しい頭痛や動悸(どうき)、回転性のめまいやふらつき、悪心、嘔吐(おうと)などを伴う疲労感の強い人。

大建中湯(だいけんちゅうとう)…お腹で腸がもくもくと動くのを自覚し、胃がつかえて気持ちが悪い、手足がよく冷えるような人。

六君子湯(りっくんしとう)…体力がなく、食欲不振、貧血、胃内停水、消化不良、下痢などの慢性胃腸虚弱に。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…体力虚弱、冷え性、貧血、頭重、めまい、肩凝り、耳鳴り、むくみなどを訴える女性の代表的なお薬です。

年齢とともに体力、筋力が衰え、胃腸の働きも弱くなりがちです。かく言う私も最近、食後ついうとうととしてしまいます。漢方薬を飲んで腹筋を鍛えなくては…。

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