私たちは日常生活の中で、何かと疲れを感じるものです。しかし疲労が積み重なると、休息や睡眠では改善されず、倦怠感や不快感を伴い、そこからいろいろな病気に進むことも少なくありません。
最近は15~65歳の6割以上の人が日々、疲労感を自覚していると言われており、国民病のようになっていますが、この原因不明の疲労が6カ月以上続くと慢性疲労症候群と呼ばれます。単なる疲労の場合は2、3日ゆっくりと休めば回復しますが、休息してもだるさが取れないときには栄養不良や病気の可能性があります。
貧血、低血圧、糖尿病、軽いうつ病などが多く、時には肝炎や腎炎なども考えられます。また病気でなくても、虚弱体質であったり加齢からくる体力低下、神経性のもの、過度のストレスなどからもよく疲労感を強く感じます。
近年意外と多いのが、精神的な原因によるだるさで、食欲不振や頭痛、肩こり、腰痛など、さまざまな不調とともに、だるい、疲れると訴えますが特別な異常がないときには、不定愁訴症候群と呼んでいます。
実際、漢方相談に来られる方のほとんどが、問診カードの「疲れやすい」にチェックされています。治療法として、病院では、安定剤やビタミン剤になるようですが、漢方では、このような半健康状態に著しい効果のある薬方がたくさんあり、その人の体質によって処方されます。それでは代表的な漢方薬をご紹介しましょう。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…手足がだるく、食欲不振で味がなく、少し多く食べると全身がだるくなって、眠くなるような人に。
清暑益気湯(せいしょえっきとう)…夏バテの代表薬で胃腸虚弱な人が暑さに負けてひどいだるさ、下痢、疲労などを訴える時に用います。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)…慢性病もしくは病み上がりで衰弱している人の体力回復に用います。日頃から顔色が悪く、意欲のない人にも向いています。
小建中湯(しょうけんちゅうとう)…胃腸が弱い人で特に朝が起きにくく、疲労がなかなか取れない時に。子どもでは腹痛や鼻血が出やすく疲れやすい場合に。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…頭痛、肩こり、めまいなどを訴える冷え性の女性に。この他にもたくさんの薬方があります。専門家に相談してみてください。
さて、かく言う私も若い頃から胃腸虚弱で血圧が低く疲れやすい体質です。特に雨の前日や夏場は身の置き場がないほどだるさに悩まされてきました。慢性疲労の人の気持ちはよく分かります。
朝の目覚めがよいというのは健康のバロメーターです。その日の疲労はその日のうちに取れるように、よい入浴と睡眠を心掛けましょうね。