Vol.33「多汗症」

今回は多汗症のお話をします。

多汗症とは、体温上昇や気持ちの持ち方、生活環境とは関係なく汗が過剰に出る状態で、汗かきとは違うはっきりとした病気です。遺伝子による先天性多汗症と、慢性病や更年期などで発生する後天性多汗症に分けられています。また全身性多汗症と手、足、脇の下、頭部によく発生する局所性多汗症があり、ご相談が多いのがこの局所性多汗症です。いずれも体温上昇やわずかな交感神経の刺激で、滴が滴り落ちるほど汗をかきます。特に手のひらや脇の過剰な汗は、書類や衣服にシミを生じさせたり相手に不快感を与えるなど、多大な社会的苦痛を感じている人が多いものです。現在、日本人で多汗症に悩む人が500万人以上、中でも耐え難い苦痛を感じるという人が80万人以上と推定されています。

治療法は、今までは塩化アルミニウム液の外用、手足に限り交感神経ブロック(副作用として代償性発汗になることがある)、脇は形成手術などですが近年、それぞれの部位に働く交感神経を切除し、発汗作用を抑える手術も行われています。しかし、やはりその部位以外の他の部分の発汗が増加する代償性発汗を伴うようです。また、交感神経の部分切除による副作用も心配です。

さて、漢方医学でも多汗症はやはり、肝気(自律神経)の乱れととらえます。同時に体質素因と合わせて体全体を治していきます。経験的にみて多汗症の人は疲れやすい体質で神経の細い人に多いようです。漢方薬を飲んで病気が根治しなくても、人によっては症状が軽くなっていきます。それでは、代表的な漢方薬をご紹介します。

防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)…疲れやすく汗のかきやすい人の肥満、むくみ、多汗症に。

玉屏風散(ぎょくへいふうさん)…虚弱体質で疲れやすく少し動くと汗が出る、感冒にかかりやすく治りにくいような人に。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…胃腸が弱く慢性的な疲労感があり、四肢がだるく立ちくらみや息切れなどある人の多汗症に。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…イライラ、怒りっぽい、目が疲れる、眠りが浅いなどの更年期障害や血の道症の人に。

この他にもその人の体質に合わせた漢方薬がいろいろとあります。ちなみに欧米人は日本人に比べて汗をかくのが半分ぐらいらしいですよ。大汗かきの私にはうらやましい限りです。

PAGE TOP