Vol.19「耳鳴り」

耳鳴りは治すことが大変難しい疾患で、多くの人が打つ手もなく困っているのが現況です。耳鳴りには種々の原因があり、訴えも高音、低音障害、耳閉感とさまざまです。小さい耳鳴りでも静かな夜ともなればやけに大きく感じて悩まされるのはつらいものですね。

発病のきっかけは騒音による難聴、中耳炎、メニエール病、抗生剤などの化学薬品の服用、不眠症、などの聴覚神経障害が多いようです。また耳鳴りは一般的に聴覚器の異常興奮ということで自律神経失調症の一つと考えられています。なので心理的、精神的ストレスとおおいに関係があり耳だけにとらわれず全身的な治療を考える必要があります。

東洋医学では耳は経絡で腎と連絡していると理解しているので、老化に伴って足腰が弱くなったり、夜間尿やむくみ、思力減退、または高血圧などの耳鳴りには、直接的な耳よりむしろ、肝、腎の衰えととらえて、補肝腎剤を処方します。

体全体の血行をよくし、血液や水分の流れをスムーズにすることでめまいや耳鳴りを改善していきます。ですから、耳鳴りがよくなっていくと同時に、血圧が安定したり、夜間尿が少なくなった、足腰のだるさやむくみがとれたということをよく聞きます。どんな病も全体をみて治療していくのが漢方医学のいいところです。それでは耳鳴りによく用いる代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅっかんこう)…頭痛、頭重、めまい、むくみがあり足の冷え、小便が少ないなどの水毒体質の人に。

柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…イライラ、不眠、多夢、のぼせ、落ち着かない、疲れやすいなどの自律神経失調症が強い人に。

八味地黄丸(はちみぢおうがん)…中年から老人の人で足腰が弱り、冷え性で夜間トイレによく起きるような人に。

釣藤散(ちょうとうさん)…血圧が高めで、めまい、ふらつき、頭痛、目の充血、目がかすむ、イライラ、肩こりを訴える人に。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…冷えのぼせ、生理失調、肩こり、更年期症候群、自律神経失調症などの人に。

当帰勺薬散(とうきしゃくやくさん)…貧血、冷え性で疲れやすく、水太り、胃腸虚弱、手足のしびれ、顔や手のむくみなどの血行不良の人に。

これらのほかにもたくさんの有効な漢方薬があります。専門家に相談してみてください。また民間薬として、血の道症の女性にはサフランがよく知られています。

中国では明の時代の漢方書「万病回春」に耳鳴りの専門薬として、有名な滋腎通耳丸という処方があります。大昔から人々は耳鳴りに悩んでいたんですね。

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