Vol.15「不眠症」

心配事であれこれと考え、夜も眠れない。そんな経験はみなさんも一度や二度はあるでしょう。でも不眠症はそれとはちょっと違います。「今夜も眠れないのではないか」と思うと、いっそう眠れない、いわゆる不眠ノイローゼのことを不眠症といます。不眠症のタイプにはいろいろとあります。寝付きが悪い、眠りが浅い、朝早く目が覚めてしまうなどが代表的な症状です。

原因の大部分は精神的なものですが、体に異常があって眠れないことも少なくありません。眠ろうと努力すればするほど余計に目がさえてくることってよくありますよね。でも眠れないからといって、睡眠薬や精神安定剤の乱用は慎みましょう。常用すると強い副作用や、習慣性(薬物依存症)の問題が出てきます。「疲れて人々は寝て疲れたまま人々は起きる」。複雑な現代社会ではだれでも不眠症になる可能性があります。

てっとり早く睡眠薬を使うのは大きな誤りで、まずその原因を考えるべきです。それでもなお眠れない場合には、漢方の睡眠作用のある穏やかなお薬を使ってみて下さい。そしてよりよい眠りを取り戻しましょう。

それでは症状に合った漢方薬をご紹介します。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)…寝付きが悪く、疲れているのに頭が冴えて眠れない人に。

柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…イライラや不安感など精神不安を伴い、夢ばかりみているようで眠れない人に。

桂皮加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)…体力がなく、つまらないことが気になり、のぼせやすい人に。

加味帰脾湯(かみきひとう)…疲れやすく精神的にもクヨクヨして、オドオドしている状態の不眠の人に。

三黄潟心湯(さんおうしゃしんとう)…首から上に血がのぼったような感じでのぼせやすく、便秘気味、高血圧症の人の不眠に。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…更年期障害のいろいろな訴えとともに不眠がある人に。

三物黄苓湯(さんもつおうごんとう)…手足をふとんの外に出したいほど、ほてって寝づらいような人の不眠に。

加味温胆湯(かみうんたんとう)…大病や過労後で神経が高ぶっていて、ささいな物音や光に驚きやすく眠れないような人に。

民間薬としてはタマネギ療法がよく知られています。生のタマネギまたは長ネギを刻んで枕元に置くだけです。タマネギの揮発成分が神経を安定させてくれるようです。また、シソ酒を寝る前に飲むとよく眠れます。漢方薬や民間薬は副作用や習慣性がなく安心して使えます。専門家に相談してみて下さい。

よい眠り、すこやかな眠りは心と体の疲労がすっかり取れて、毎日のエネルギを回復してくれます。朝起きたとき、気分がスッキリしていて熟眠感がある。疲労が回復していてエネルギーに満ちている。毎日こんな睡眠をとりたいものですね。来年もよろしくお願いします。

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