江本薬局
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Vol.40「鼻づまり、蓄膿症」


今回は、この急性鼻炎を繰り返し慢性化してしまった慢性副鼻腔炎(蓄膿症)についてお話しします。

私たちの鼻腔の周りには、左右に4対の空洞(計8個)の副鼻腔があり、ここに炎症が起きて、うみがたまる病気を蓄膿症といいます。

アレルギー性鼻炎や風邪からの鼻づまりが治り切らなかったり、目や耳などの鼻周辺組織に病気がある場合、または糖尿病などの慢性病体質などから起こることがほとんどです。体質的に鼻中隔に曲(わんきょく)があったり、副鼻腔から鼻腔への排泄障害のある人も蓄膿になりやすいといえます。

症状は、鼻づまり、粘りのある鼻汁の他に嗅覚の低下、いびき、頭重などがあり、ひどい時には膿様の分泌物が出て悪臭を放つこともあります。また集中力や根気がなくなり、仕事や勉強の能率も悪くなりがちで見た目以上につらい病気です。

さて、一般的な治療法は抗生物質やタンパク分解酵素剤などの内服や、膿を出すための洗浄が中心になりますが、あまり効果がない時は手術をします。部分的な保存的手術と、大部分取ってしまう根本的手術ですが、多くの場合再発するようです。いずれにしても一時的な治療では根治しにくい病気といえます。

漢方では、蓄膿症に対して第一に免疫力を高めて、排膿を促し、化膿しにくい体質に改善していくことで、根本治療を行います。手術を受けようかどうか迷っている時には、ぜひ一度漢方薬を試してみてください。半年か一年ぐらいの服用ですっかり治ってしまう場合が多いようです。それでは漢方薬をご紹介します。

葛根湯加川辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)…鼻づまりがひどいため頭痛、頭重をよく訴える人に。

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)…手足の裏に汗をかきやすく化膿しやすい人に。

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)…アレルギー体質の人の蓄膿症に。

辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)…特に鼻づまりがひどく息もできないような人に。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)…便秘がちで肥満体質の人で、特に鼻汁がのどに流れ落ちるような時に。

川弓茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)…鼻づまりがひどく目の周辺まで痛むような時に。

以前、慢性副鼻腔炎で嗅覚を失った方から「死ぬまで一度でいいから花の香りを感じたい」と伺ったことがありました。日頃普通に匂いを感じられることは、とてもありがたいことなんですね。
2015-01-05 00:00:00

Vol.39「更年期障害(血の道症)」


さて、今回は女性には避けて通れない更年期障害についてお話しします。この更年期障害で精神的な不安や閉経の寂しさなど、悩みを持つ女性も少なくありません。一般に女性の閉経期は50歳前後ですが、この時期に現れる体のさまざまな不快な症状が更年期障害と呼ばれています。

自律神経失調症と違って、女性ホルモンの減少によって起こります。このホルモンバランスの乱れによって自律神経の働きが異常になって引き起こされるのです。

症状は、ひどい頭痛、肩凝り、腰痛、のぼせ、動悸(どうき)、肥満、めまい、多汗、手足のしびれ、全身の倦怠(けんたい)感などの訴えが圧倒的に多く、日本では昔から「血の道症」と呼ばれています。ちなみにこれは、江戸時代の香月牛山の著した和漢薬処方集の中の「血の道煩(つらい)」という用語に由来すると言われています。

中国では「虚」「積冷」「結気」と言い、これは腎の衰え、冷え性、ストレスを意味します。いずれにしても、体の気、血液、水分などがうまく巡らなくなり、いろいろな不定愁訴が現われてくるようです。また、更年期障害は女性ホルモンが安定すると数年で治まりますが、中には何年間も体の不調に悩む人もいます。

さて治療法は、エストロゲンホルモン治療、鎮痛剤、精神安定剤などですが、長く使い続けますと、副作用が心配です。漢方では昔から「血の道症」は、得意な分野で有効な薬方がたくさんあります。それではよく効く漢方薬をご紹介します。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…冷えのぼせ、頭痛、生理痛がある人。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…貧血ぎみでイライラなどの神経症状が強く、突然背中が熱くなったり寒くなったりするような時に。
 
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)…いつも喉の辺りに何かつかえているようで胃腸の弱い人に。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…体力がなく冷え性で疲れやすく、むくみ、めまい、耳鳴りなどを訴える人に。

甘麦大棗湯(かんぱくたいそうとう)…疲れやすく、時に原因もなく悲しくなったりイライラするような人に。

この他民間薬として、今も昔も変わらず用いられているのがサフランです。めしべ10本ほどを熱湯で煎じて飲みます。すぐに体が温まり血行がよくなり、ほっとして楽になります。サフランは薬局などで必要な分だけ小分けしてくれます。

最近は女性更年期もさることながら、男性更年期という言葉もよく聞かれるようになりました。ストレス社会が生きる意欲を妨げてしまうんでしょうかね。
2014-12-29 00:00:00

Vol.38「帯状疱疹(ヘルペス)」


先日「先生、この痛み、どうにかなりませんか。つらくて…」と相談がありました。お話を伺いますと、ヘルペスの後遺症で顔面、頭部の神経痛が残り、痛み止めを飲んでもあまり楽にはなりません、とのことです。本当につらそうでした。

今回は、春や秋によく発症するこの帯状疱疹(たいじょうほうしん)についてお話しします。子どもの頃、水ぼうそうにかかった人も多いと思います。このウイルスは水ぶくれが治った後も、せき髄の神経にひそんでいて、過労や睡眠不足、ストレスなど、その人の免疫力が弱くなった時に、神経中の帯状疱疹ウイルスが、体の左右どちらか一方の神経にそって広がって帯状疱疹が起こります。お腹や手足にもできますが、特に顔や胸に多発し、神経痛のようなチクチクする激しい痛みと、赤発、水ぶくれが集まってできてきます。

水ぶくれは1カ月ほどで黄色くなり、かさぶたとなって皮膚は治ったように見えますが、厄介なのは、後遺症として残る神経痛です。頭や顔の痛みは特に強く高熱が出ることもあり、目の角膜にまでおよぶと、視力が低下して失明することもあります。また雨の前日や寒い日には痛みはよりいっそう強くて、患者さんは精神的にも大変つらい思いをしています。

病院の皮膚科では、血清療法や抗生物質とステロイドの入った軟膏、神経ブロックなどの対症療法を行いますが、特に老齢者の場合、後遺症として神経のつらい痛みが長年残ることが多いようです。漢方では、帯状疱疹の性質、痛みの特徴や部位を判断して、疱疹の消退、痛みの軽減を行い、後遺症を残さないように考えて薬を使い分けます。それではいつものように代表的な漢方薬をご紹介します。

葛根湯(かっこんとう)…初期のヘルペスに2時間おきぐらいに服用するとよく効きます。

清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)…特に顔面ヘルペスの時に。

越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)…紅暈(こううん)を伴う小水疱が帯状に群生している急性期に。

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)…体を冷やしたり、特に冷たい風に当たると激しく痛む時に。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…体力や免疫力が低下していて、疲れると神経痛が強くなる人に。

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)…帯状疱疹の神経痛様疼痛に最もよく用います。三又神経痛も助間神経痛もそうですが、このヘルペス後
遺症神経痛も、やはり体をよく温め、休めて免疫力を強くすることです。

さてことしもあとわずかになりました。何かと気ぜわしい師走ですが、風邪など引かないようにしてよい年を迎えましょうね。
2014-12-22 00:00:00

Vol.37「めまい、立ちくらみ」


昔から日本女性の多くの人が、めまいや立ちくらみを経験しています。そのほとんどが内耳の平衡感覚の障害がもとで起こりますが、患者にとっては何とも不安で、このまま意識を失って死んでしまうのではないかと思うほどの人もいます。今回は、そのめまいや立ちくらみについてお話しします。

そもそもめまいは首から頭部への血流障害で、雲の上を歩いているようなフワフワとした感じの浮動性のめまいと、自分や周囲がぐるぐる回るような回転性めまいに分けられ、浮動性は脳やその周辺の血管に、回転性は、耳に異常があると見られています。

また耳鳴りや難聴を伴うめまいは、メニエール氏病、片方の耳が聞こえにくくなって起こるめまいは、突発性難聴、ふらふらして立ちくらみや脱力感を伴うめまいは、循環器障害と考えられます。他にも吐き気や嘔吐(おうと)、冷や汗、頭痛などを伴ったさまざまなめまいがあります。

さて、めまいが起こったらまず安全な場所で、静かに目を閉じて動かないようにし、安静を保ちます。特に回転性のめまいには頭を動かさないように注意してください。倒れないようにすることが大切です。めまいが長引く時は、体を冷やさないようにして温めます。治療法としては、特別な場合を除いて、内耳の圧力を下げる利尿剤や、車や船酔い止めの薬が一般的です。

漢方では、めまいのことを眩暈(げんうん)といい、水毒・淤血(おけつ)によって発症すると考えています。要するに、首から頭部への血行不良と見なし、体全体の血行を促進する薬方が多く用いられています。それでは、代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)…胃腸が弱く、胃の辺りに振水音がする動悸(どうき)を伴うめまいに。特に立ちくらみしやすい人によく効きます。

半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)…胃下垂や胃アトニー体質で疲れやすく、頭痛を伴うようなめまいに。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…貧血ぎみで疲れやすく、冷え性な女性の習慣的なめまいに。体質改善にも。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)…不安神経症を伴う人の慢性的なめまいに。

血府遂淤湯(けっぷくちくおとう)…中高年の高血圧傾向の人の頭痛、肩凝り、のぼせなどを伴うめまいに。

最近は女性に限らず、男性や子どももめまいや立ちくらみを訴えてよく相談に訪れます。ストレス性疲労が多いようです。
体を温めて休ませ、よい睡眠をとるように心掛けましょうね。
2014-12-15 00:00:00

Vol.36「肩こり五十肩」


昔から肩こりは欧米人に比べて日本人は多いと言われていますが、今回はこの肩こりのお話です。私は体形がなで肩で30歳の頃から肩こりを自覚するようになりました。こりつけてしまうと首から目まで疲労し、子どもたちによくもんでもらったものです。

肩こりは見た目より本人はつらいものです。これは肩、首周囲の筋肉の血流障害ですが、その原因はさまざまです。得に悪い姿勢、運動不足、ストレスが三大原因といわれています。

太り過ぎや、意外に見落とされていますが、枕の高さや眼鏡の不具合などの日常的な生活習慣からも発症しています。間接的な要因としては慢性的な首から上の炎症(鼻炎、中耳炎、気管支炎など)首の骨(頸椎や脊椎)の病気、内臓の病気、血圧の異常などが考えられます。いずれにしても「肩こり頭痛は、病状の警戒信号」と言われ、他の病気の随伴症状として現れることもあるので、甘くみてはいけません。

さて五十肩は誰でも多少はかかる病気ですが、得に40代~50代に発症し、こりというよりも肩関節の疼痛症候群です。私も経験しましたが、腕が上がらず戸を閉めるにも一苦労です。寝ている時も、肩がうずいてなかなか寝つけないこともあります。五十肩は、肩関節の老化現象で、筋肉や腱が堅くなって痛みが起こるとされていますが、そればかりではないようです。

さて、治療法ですが、神経根ブロック療法(神経に直接注射して痛みを遮断する)、ソフトカラー装着、間欠けん引、筋弛緩剤の内服などがありますが、自分でできる療法としてホットパックの温熱法、ぬるめの湯の入浴、軽めのマッサージ、ビタミン剤の補給などがおすすめです。

東洋漢方は、こうした病気とは言えないけれどもつらい症状に大変有効です。また、その薬方も非常にたくさんあります。それではご紹介します。

根湯(かっこんとう)…首の後ろから背中や肩にかけて縦にこりつける。肩こりの代表薬。

小柴胡湯(しょうさいことう)…首から肩にかけて横にこる。

柴葛湯(さいかつとう)…首から縦、横両方にこる。

治肩背拘急方(ちけんはいこうきゅう)…神経を使い気苦労のためこりつける。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)…月経障害や冷え、のぼせなど血体質の肩こりに。

大柴胡湯(だいさいことう)…肥満、高血圧で便秘がちな人の首から両肩にこりつける。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…血色が悪く体力がない冷え性の女性に。

延年半夏湯(えんねんはんげとう)…胃腸の弱い人の特に左肩のこりと痛みに。

明治を代表する女性作家の樋口一葉は、慢性的な肩こり頭痛に悩まされ、執筆中に絶えず鉄の文鎮で肩をトントンたたいていたそうです。今も昔も、女性は肩がこるんですね。
2014-12-08 00:00:00

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