江本薬局
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Vol.55「膀胱過敏症」


一般的に膀胱炎と言えば尿道からの大腸菌の侵入による感染で、抗生物質やサルファ剤などで対応しますが、意外と知られていないのが今回の膀胱過敏症です。

尿道の検査では異常が見当たらず、しばしば精神的緊張や、疲労、自律神経失調症などによって起こりますが、頻尿、尿意促進、排尿痛、排尿後の下腹部不快感、などの症状は菌性膀胱炎とほとんど同じです。

先日ご相談のお客さんが「バス旅行に行きたいのに行けないし、どこかに出掛ける前には、必ずトイレができる場所を確認しておかないと不安で…」とおっしゃっていました。日常生活に大変負担がかかっています。

この膀胱過敏症は、過敏性大腸炎や神経性胃炎、けいれん性便秘、神経性下痢症などと同じで強い精神的ストレスによって症状が強くなります。現代医学の治療法は、自律神経安定剤や筋弛緩薬になります。

さて、漢方では自律神経の働きを「肝気」といい、イライラや精神不安、ゆううつ感、怒りっぽい、などの情緒失調を肝気胃結と呼びます。この自律神経の緊張をほぐすことを第一に考えて、柴胡や芍薬などを用いて治療に当たりますが、やはりどんな病気にも漢方では体全体を見て処方を決めていきます。特に、この神経症の分野での漢方薬の効果は素晴らしいものがあります。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…尿がスムーズに出ない、排尿時に刺すような痛みを伴う、下腹部の膨満感、むくみなどや、生理不順がある女性に。

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)…イライラ感が強く、耳鳴りや不眠などで黄色の帯下、陰部湿疹などを伴う、排尿痛、頻尿、濃縮尿、排尿困難な人に。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)…夜尿や失禁、夜間の排尿回数が多いなどで、寒がりや四肢の冷えを訴える人に。

猪苓湯(ちょれいとう)…尿量が少なく排尿病と残尿感を訴え、時に血尿の見られる時に。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)…特に排尿痛がひどい時に他の漢方薬と併用します。

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅっかんとう)…新陳代謝が低下して下肢が水中に座っているかのように感じる、冷えの強い人の膀胱過敏症に。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)…体質虚弱で疲れやすく貧血、顔や手足のむくみ、生理量が少なく遅れがちな人の繰り返す膀胱過敏症の体質改善に。

さて、この膀胱過敏症になる人は性格が真面目で精神的ストレスに弱い人が多いようです。少しはずぼらぐらいがちょうどいいんでしょうかね。
2015-04-20 00:00:00

Vol.54「甲状腺機能異常」


今回は若い女性に多い、俗に言うバセドウ病、橋本病についてお話しします。

左右の鎖骨の間の気管のところに甲状腺があり、ここから分泌される甲状腺ホルモンは、私たちの体の新陳代謝をスムーズにする働きがあります。全身の細胞を元気に活動させる役目です。本来は脳下垂体からの刺激ホルモンによって甲状腺ホルモンは分泌されるのですが、リウマチや膠原病のように自己免疫グロブリンがこの甲状腺を直接、異常に刺激することによって甲状腺ホルモンを過剰に分泌してしまう病気をバセドウ病といいます。

特に20代から30代の女性に多く発病します。症状としては心拍数が増える、体温が上がり、汗をよくかく、動悸(どうき)息切れ、眼球が突き出る、皮膚が黒ずむ、イライラ怒りっぽくなるなど、さまざまです。

治療法は甲状腺ホルモン剤、放射性ヨード剤の数年間の服用が中心ですが、効果の上がらない時や妊娠、出産のため早く治したい人には手術となり、甲状腺の一部を切除することもあります。

また、これとは反対にTリンパ球が甲状腺の細胞を壊し、甲状腺ホルモンの分泌低下した状態が橋本病と呼ばれるものです。

主な症状は、全身がとても冷える、むくむ、皮膚がかさつく、貧血、だるくて疲れやすい、息切れなどです。

治療法は甲状腺ホルモン剤を根気よく長期に服用を続けることですが、バセドウ病も橋本病もいずれも自己免疫疾患です。

さて、漢方では自己免疫疾患は結果として淤血(おけつ)とみなし、またホルモン分泌や腺分泌は自律神経支配なので肝気の乱れと考えます。

漢方の基本的な考え方は、いつも気・血・水をめぐらし、体が持つ自然回復力を高めようとするものですが、特にホルモン分泌の失調に対してはストレスなどからのメンタル的な要素が強く、柴胡、芍薬、牡蛎(ぼれい)などで疎肝(神経を和らげる)をしながら症状に応じた漢方薬と併用していきます。

症状が中程度であれば、漢方で治癒してしまう例も多くあります。それでは、漢方薬をご紹介します。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)…不眠、イライラ、動悸などで不安神経症や強迫神経症の人に。

白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)…新陳代謝が盛んで熱感があり、のぼせやすい人に。

加味逍遥散(かみしょうようさん)…特に女性で疲れやすく、肩凝り、イライラ、のぼせなどの血の道症の人に。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…慢性疲労感、立ちくらみ、低血圧症、頭重などを訴える甲状腺機能低下症の代表薬。

防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)…むくみを伴う時に併用します。

どうも甲状腺機能異常は、ストレスの受けやすい人に多く発症しています。生活を緩めましょうね。
2015-04-13 00:00:00

Vol.53「心身症」


最近は女性に限らず、男性更年期もよく耳にします。ストレス社会の中で心理的、精神的な要因で身体のあちこちに異常が起こる病気が、今回お話しする心身症です。

同じような原因でも精神面に症状が現れる場合は、精神病や神経症といい、心身症とはまったく違うものです。

原因となるストレスには、自分や配偶者、家族の病気、仕事や家庭のトラブル、借金、離婚などが多いようですが、人それぞれストレスに対する反応が違います。

性格的には真面目で、内向的な人、職場でのささいなことにも緊張したり、不安になったりする情緒不安的な人に心身症が起こりやすい傾向があります。

体に現れる症状は大変多く、円形脱毛症、多汗症、チック、腰痛、筋肉痛、潰瘍性大腸炎、過食症、めまい、耳鳴り、頭痛など、さまざまです。

この他にも、憂鬱(ゆううつ)感、全身がだるい、動悸(どうき)、性欲減退などもよく聞きます。また、子どもがよく「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴えるのも心身症の症状の一つです。

治療法は、身体に現れている症状の改善と精神面からのケアが必要です。薬物療法ではマイナートランキライザー(抗不安薬)や抗うつ薬がよく使われますが、完治は難しいようです。

自分でできる方法には、自己暗示をかけることで、心身をリラックスさせる自律訓練法が効果的です。

漢方では、神経から起こる病気を総称して肝気失調と言います。神経が胃腸に及んだ時は、肝胃不和、過換気症候群など、肺に及んだ時には肝鬱犯肺、イライラ、動悸などは心肝火旺(しんかんかおう)と考えます。

漢方治療の目標は、疎肝(神経を緩やかにすること)で柴胡や芍薬、蘇葉という生薬を配合して処方を決めます。この神経症や心身症は漢方の得意とする分野で、数カ月でかなりの効果が見られ、継続服用していくと完治してしまう人も多くいます。それでは漢方薬をご紹介します。

四逆散(しぎゃくさん)…憂鬱感、情緒不安定、便秘と下痢を繰り返す、生理痛、生理不順に。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…冷え性、肩凝り、精神不安、イライラ、のぼせ症に。

半夏厚朴湯(はんげつこうぼくとう)…気分がふさいで咽喉、食道部に異物感があり、動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症に。

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)…冷え性、貧血ぎみで動悸、息切れ、寝汗、頭部の発汗などの血の道症、不眠症、神経症に。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)…疲れやすく神経過敏で神経質、不眠症、眼精疲労などに。

ここ数年、心身症の方のご相談が多くなりました。人生に喜びや楽しみが少なく、心に栄養が足りないように感じています。自分にやさしくしてみませんか?
2015-04-06 00:00:00

Vol.52「潰瘍性大腸炎」


きょうは潰瘍性大腸炎のお話です。

この潰瘍性大腸炎は、法定難病に指定され、現代医学的な治療が行き詰まっている病気の一つです。欧米人にもともと多いのですが、最近では20歳~30歳代を中心に日本人にも増えています。

大腸粘膜に多数の小さな潰瘍ができ、突然、腹痛、下痢が始まります。原因はよく分かっていませんが、自己免疫疾患の一つだろうと考えられています。

最初は直腸から始まり、S字状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸へと広がり、それに伴って重症になり合併症の危険も大きくなります。主な症状は下痢、腹痛、腹鳴りですが、血液や粘液、うみなどが交じり、一日数回から、時に10回以上もトイレに通うようになります。

毎年、症状が軽くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行し、重病になると、発熱、倦怠(けんたい)感、体重減少、貧血などが見られるようになります。

現在の治療法は、サルファ剤やステロイド剤の内服が中心ですが、完治は難しく、再発することの多い厄介な病気です。食事面では日頃から繊維質の多いものや生野菜、コーヒー、カレー、アルコールなど、大腸を刺激する食品を控えるようにします。

さて、東洋医学は常に体全体の気血の流れを考えて薬方を決めます。一般的に、潰瘍性大腸炎を起こす人は、性格が真面目で、几帳面、神経質な人が多いようです。また精神的なストレスで、より症状が悪化することから、もともと胃腸虚弱の人に自律神経過敏が続き、発病すると考えて疏肝健脾(神経を和らげて腸を整えること)を中心に漢方薬を選びます。大方の人は2~3カ月ほどで症状が安定し、再発も少ないようです。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

四逆散(しぎゃくさん)…神経過敏体質な人で精神的なストレスによって、より症状が悪化するような人の体質改善に。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)…体力がなく疲れやすい人で、もともと胃腸の免疫力が低い慢性的な大腸炎の体質改善に。

人参湯(にんじんとう)…下痢と発熱が続くときに効果があり、長期に服用して再発予防に。最もよく用いられます。

弓帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)…粘血便に対応して人参湯などと併用します。

胃風湯(いふうとう)…体力がなくピチピチと音が出るような下痢が続くような人に。

潰瘍性大腸炎は原因不明の難病ですが、ストレス社会も一つの原因ではないかと考えています。ぜひ漢方薬を試してみてください。
2015-03-30 00:00:00

Vol.51「逆流性食道炎」


さて、今月は食道のお話です。食道の内腔は親指ほどの太さですが、この食道粘膜や胃粘膜にびらんや炎症が起こると、胸やけや、飲み込むときの痛み、つかえ、つまった感じなどの症状が出てきます。

これが食道炎で、原因としては日頃から熱いものや暴飲暴食、アルコールの飲み過ぎ、ストレスからの胃酸分泌過多などが多いようです。よく耳にするのは、胃液や十二指腸液が逆流して起こる逆流性食道炎です。前かがみになったり横になったりすると胸やけや胃痛がよりひどくなります。

病院では「胃の入り口(噴門部)がゆるんでいるから」と言われますが、幽門部の通過障害もあります。

治療法は、制酸剤や粘膜保護剤が有効なこともありますが、決め手にならないようです。また、これとは反対の食道アカラシア(噴門痙れん症)という病気があります。胃の入り口の噴門は、普段は閉じていますが、食べ物を飲み込むと反射的に開きます。この動きに異常が起こった状態です。

原因は自律神経の失調と考えられていますが、はっきり分かっていません。症状は食道や胸のつかえ、固形物より液体の方が通りにくい、吐き気、嘔吐(おうと)などです。

これらは食道がんの症状に似ていますが、食道がんは50歳以上の人に多く、食道アカラシアは20代~30代の人に多く見られます。

また、日によっては全く症状が出ないこともありますが、ストレスや体調の悪い時などに再び繰り返し慢性化する傾向があります。治療法は、流動食や内服薬、バルーン療法などの対症療法になります。

さて、漢方では慢性的な消化管(噴門部・幽門部)のジスキネジー(通過機能障害)を肝気(自律神経)の乱れととらえて柴胡、厚朴、枳実(カラタチの実)などを用いて、ぜん動をスムーズに改善していきます。それでは代表的な漢方薬をご紹介します。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)…胃壁や噴門部の痙れんを和らげます。神経性胃炎や妊娠嘔吐(つわり)などに。

加味逍遙散(かみしょうようさん)…イライラや、ゆううつ感、胸脇部張痛などの自律神経症を伴う神経性の胃・食道炎に。

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)…特にみぞおちのつかえ(心下痞)が強い食道アカラシアに用います。

茯苓飲(ぶくりょういん)…噴門部・幽門部の痙れんをゆるめ、ぜん動を調節して逆流を防ぎます。逆流性食道炎、食道アカラシアの代表的な漢方薬です。

ストレスは消化管によくないですね。
2015-03-23 00:00:00

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